熟し具合で栄養が変化する
■期待する効果によって選ぶ「バナナのベストタイミング」
ほかのフルーツにはないバナナの特徴として、栄養素が豊富なこと以外に「熟度によって、期待できる健康効果が変わる」点が挙げられる。
例えば、店頭に並んだばかりで、まだ軸や末端に青みの残る「青めバナナ」には、整腸効果が期待される。これは、食物繊維と同様のはたらきのある“難消化性デンプン”が多く含まれるためだ。難消化性デンプンは、バナナが熟すにつれて分解され、糖に変わる。そのため、バナナはだんだん甘くなる。便秘で悩みがちなら、まだ熟しきっていない青めバナナのさっぱりした甘さを楽しむとよいだろう。
そして前に述べたように、全体が完熟した「黄色バナナ」には、とくに美容やアンチエイジングといった効果が期待できる。
バナナがさらに熟していくにつれ、皮には“シュガースポット”と呼ばれる茶色い斑点がポツポツと現れ、徐々に広がって、全体が茶色くなってくる。この「茶色バナナ」に期待されるのは、免疫力向上効果と、胃かいようの抑制効果。
免疫力については、追熟したバナナを食べたマウスの血中で、免疫活性を高めるIL-12という物質が増えたという研究結果が発表されている。
茶色くなったバナナには、フルーツには珍しいリン脂質が含まれる。リン脂質の働きとしては、胃粘膜を保護して、胃かいようを抑制するというデータが出ている。牛乳とバナナを混ぜると、胃粘膜保護効果が向上することもわかっているので、胃に悩みのある人は、茶色バナナをバナナシェイクにして飲むのがオススメだ。
また、バナナには、エネルギーに変わりやすい糖も、ゆっくり消化される糖も含まれているため、即効性と持続力の両方があり、オリンピックに出場するような第一線のアスリートも活用。これから始まるロンドンオリンピックのTV中継、ウォームアップエリアなどでバナナがチラッと映る……なんてシーンもありそうだ。
アスリートだけでなく、成長期の子供から、忙しいビジネスマンや美容への意識の高い女性、高齢者まで、バナナはどの世代にとっても嬉しい栄養素が充実している。食べやすさや手頃さだけじゃなく、欲しい栄養や効果を狙って「青バナナ」「黄色バナナ」「茶色バナナ」を食べ分けるなど、少し意識するだけでもバナナの楽しみ方は広がりそうだ。