国内

猪瀬副知事が追及した東電病院にホテル並みの「特別室」あり

 東京電力の株主総会(6月27日)で、筆頭株主である東京都の猪瀬直樹副知事(65)に「売れ」と迫られて注目されたのが、新宿区信濃町に位置する東京電力病院である。 1951年に職域病院として開設されたこの病院の診療は、東電の社員とその家族、OBに限られる。
 
「企業の名前がついた病院はたくさんあるが、どこも一般診療をしている。そうしないと経営が大変だからです。なのに東電病院は赤字でも平気で会社の金を注ぎ込んでいる。1兆円の税金を使って救ってもらう会社のやることではない」(猪瀬氏)
 
 東電病院は内科・外科・婦人科・眼科・神経科など9つの診療科を備える総合病院。113の病床を備えるが、稼働率は同規模の病院と比べて例外的に低く、東京都の立ち入り検査によると、現在の入院患者は20人しかいないという。

 昨年の福島原発事故時には、体調を崩した当時の清水正孝社長の入院先ではないかとも伝えられた。 都内の病院事情に詳しい医療関係者が解説する。

「東電病院は、隣の慶應義塾大学病院と提携しており、スタッフ、設備ともに充実しています。部屋のタイプは大部屋、2人部屋、個室の他に40平方メートルほどの広さの特別室も備えられており、トイレやシャワー、キッチンまでホテル並みの機能を備える。役員経験者などはここにいつでも、割安に入れるわけだから、できるなら手離したくない“聖域”なのでしょう」
 
 そんな心持ちは、株主総会での山崎雅男副社長の答弁でも明らかだった。
 
 猪瀬氏から、同病院の妥当性について質された山崎氏は、「(東電は)一般開放も検討したが、新宿区には大きな病院がいくつかあり、都のほうから難しいといわれた」と釈明したが、猪瀬氏のその後の調査によると、東電が都に一般病院への移行について相談したのは5年前。その際、都の担当者は「条件さえクリアできれば、一般開放は可能」と回答しており、都が一般開放に難色を示した事実はないという。また、その後一切東電から具体的な相談はなかったという。
 
 さらに、売却できない理由について山崎氏は、「同病院から医師を派遣している福島への医療支援を続けたい」との旨を述べたが、現在派遣の実態は週末のみ1人という有り様だった。
 
「電気料金の値上げを“権利”といってしまうような、独占企業の殿様商売の体質は今もってまったく抜けていない。今後は新設される経営改革本部と定期的に会合を重ね、東電の構造改革を推進していく」(猪瀬氏)
 
 今回の追及により、東電病院の処遇は検討課題とされることになった。その資産価値は122億円といわれる。売れるものは売る、当たり前だろう。

※週刊ポスト2012年7月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン