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暴走車事故 殺人罪成立で保険会社の損害賠償義務なくなる例も

 6月26日、大阪市西成区で発生した暴走車による事故で、男女6人が重軽傷を負った。逮捕された無職の永田邦勝容疑者(32才)は、覚せい剤を使用して運転していたという。

 4月12日には京都・祇園の繁華街で、軽乗用車が赤信号の交差点に突っ込み、男女7人が死亡、11人が負傷。暴走した運転手(30才)も死亡した。てんかんの持病があったという。続く4月23日には京都府亀岡市で、無免許の少年(18才)が運転する軽乗用車が集団登校中の小学生の列を襲い、小学生10人がはねられて死傷、26才の妊婦も胎児とともに命を奪われた。

 いま“暴走車”事故が相次いでいる。祇園の事故では、加害者である運転手は死亡している。容疑者死亡によって損害賠償はどうなるのだろうか。

 加害者が保険に加入していた場合、もし加害者が死亡しても保険会社は支払い義務を負っているため被害者は損害賠償請求をすることができる。しかし、もし加害者が無保険だった場合、事態は複雑だ。

 交通事故に詳しい萩原猛弁護士が解説する。

「通常、加害者が死亡してしまった場合、負担するべき損害賠償は、一応加害者の相続人が引き継ぐことになります。ただし、相続放棄という手続きをとると、相続人は義務を免れることができます」

 とはいえ、泣き寝入りするしかないわけではない。勤務中の事故や借りた車での事故の場合は、車の所有者など“運行供用者”に損害賠償を請求できる。

「祇園の事故は勤務先会社の車を業務上運転して事故を起こしたようですから、同会社は自動車の所有者に発生する“運行供用者責任”があるので、被害者は損害賠償請求をすることができます」(萩原氏)

 しかし、今回の事故ではもう一つの問題点がある。事故が故意によるものか、てんかんの症状による影響があったのかなどが明確にならないかぎり、損害賠償がどうなるかは判断できないのだ。

「警察は容疑者について、当初は自動車運転過失致死傷罪、その後は殺人罪の容疑で捜査しているようです。もし、殺人罪が成立し、故意に事故を引き起こしたということになれば、保険会社は損害賠償金を支払う義務がなくなります。また、この事故が容疑者のてんかん症状に起因するものだとすると、病気の事実を知っていて、運転を阻止するべきであった周囲の人に過失責任が生じる可能性もあります」(萩原氏)

 つまり、事故が故意であるか、保険の加入状況などさまざまな条件が整理されない限り、損害賠償がどうなるのか判断は難しいという。

 事故の凄惨さを見れば、被害者遺族が「殺された」と受け止め、重い刑を求める気持ちもある。しかし、殺人罪が認められれば、被害者側への補償金がそれだけ減ってしまう現実もある――。

※女性セブン2012年7月19日号

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