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【同業者が選ぶゴッドハンド医師:呼吸器編】驚異の出血量も

「神の手(ゴッドハンド)」を持つ天才外科医は誰なのか。それを正確に知るのは、同業者である外科医だけだ。今回【呼吸器外科医】について、医師たちが選ぶドクターズ・ドクターを紹介する。

 がん治療は手術、放射線、化学療法が3大治療として定着し、手術を行なうのは、比較的早期のがんであることが多い。進行がんの生存率は、いくらいい手術をしても、下がってしまうのが普通だ。

「とはいえ、術後のトラブルの有無、術後の回復に手術の良し悪しが大きく影響します。丁寧できちんとした手術をすれば、術後の回復が早い。国立がん研究センター東病院の吉田純司先生は、肺がん手術でもっとも信頼できる医師の一人です」(都立病院がん専門医)

 外科医の腕を知る重要な目安の一つに、出血量がある。もちろん、出血量が少ない手術が理想だ。一般的には100~200㏄ぐらいといわれているが、吉田医師の執刀は100㏄以下、時には10㏄で済む場合もある。

 吉田医師は外科医としての心構えをこう話す。

「肺がんの手術は、昔と比べ安全になってはいますが、1000人に数人は命にかかわる危険に陥ることがあります。術後に何のトラブルもなく、患者さんに元気で退院していただくのが外科医としての使命。そのためには、細かい神経や見えない神経を傷つけない繊細な手術が必要です。一方で、手術中判断が難しい場面で、踏み出せる決断力も必要なのです」

 手術の良し悪しが大きく影響するのが、術後の肺炎だ。肺の周辺には咳に関係する神経(迷走神経・反回神経)が通っているが、それをできるだけ損傷しないで患部を切除するのが外科医の腕の見せ所でもある。リンパ節郭清(切除)の時に神経を損傷してしまうと、咳の反射が損なわれて痰が出にくくなり、嚥下機能の低下によって誤嚥性肺炎を起こしやすくなる。肺炎は術後の回復を遅らせたり、最悪の場合は死に至る。

 吉田医師が率いる東病院呼吸器外科では、0.66%と低い死亡率を達成している。

 肺がんは難治性がんの代表で、手術後も闘病生活を続けなければならない患者も多い。横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター坪井正博准教授は、3000例もの手術を手掛けてきた経験豊富な外科医だが、緩和ケアにも力を入れ、患者に寄り添う医療を実践している。

※週刊ポスト2012年9月14日号

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