iPhoneの新モデル「iPhone5」が13日発表になった。日本時間未明に行われた発表会では眠い目をこすりながらネットにかじりつく人も多く、ジョブス亡き後も今だアップルの威光は衰えず……でいいのか!? たかが携帯電話、されど携帯電話。大人力コラムニストの石原壮一郎氏がこの「ビッグウエーブ」の乗り方を講義する。
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日頃から、どうにかして若いもんに感心されたいと思っているみなさま、絶好のチャンスがやってまいりました。日本時間9月13日未明に、米アップルが「アイフォーン(iPhone)」の最新型モデル「iPhone5」の全貌を発表。21日の発売に向けて、会社でも飲み屋でも、ますます話題が盛り上がるでしょう。乗るしかありません、このビッグウェーブに!
アップルが新製品を発表するたびに、情報に敏感で知的でオシャレで意識が高いフリをしたい人たちが、したり顔で「今度のは画期的だ」だの「期待ハズレだった」だの、さも世界の一大事であるかのようにピーチクパーチク騒ぐのが常。「携帯の新製品ぐらいで、なに大騒ぎしてるんだ」と言いたいところですが、彼らは「偉大なるiPhone様を華麗に使いこなしている自分」に酔っているので、ひとしきり熱く語らずにはいられません。
話を合わせようとして、いい歳をしたオヤジが同じように熱く語っても不自然だし、そもそも本当は興味なんてないので、無理していることを見透かされてしまうのがオチ。要点だけ押さえて、チラッと知識を披露したり小ネタを振ったりすることで「あれ、この人、意外にわかってるのかも!?」と思わせましょう。
若者たちがiPhone5について話していたら、さりげなく「ま、軽くて薄くなったっていうのはいいよね」と呟きます。さらに、ネット上で広まっているネタの応用ですが「この調子でいくと、iPhone10あたりは座禅のときに使う警策(きょうさく)みたいになるんじゃないか」と言えば、発想の柔軟さと大人の教養を見せつけることができるでしょう。さらに「コネクタの形が変わったから、今ごろ周辺機器のメーカーは大忙しだな」と経済的な波及効果に思いを馳せたり、「LTEに対応したといっても、まだあんまり意味がないらしいね」と業界事情に通じている気配を漂わせたりしてみるのも一興です。
LTEといえば、すでに定番の間違いになっていますが、うっかり「今度の5はTELに対応したらしいね」と言わないように注意しましょう。心の中で、あるいは口に出して「もともと電話(TEL)ですから!」と突っ込まれます。ただし、自分のガラケーを取り出して「俺のケータイだって、LTE は対応してないけどTELには対応してるぜ」とオヤジギャグ調でイバるのは、ウケるかどうかは別として、お茶目で勇敢な試みではあります。
あなたが万が一、気の迷いでiPhoneを使っていて、若者に「5にしないんですか?」と尋ねられたら、興味なさそうに「電話なんて、何でも同じだよ」と返すのが大人の矜持であり我慢のしどころ。本当はすぐにでも欲しかったとしても、わざわざ予約してまで発売直後に買ったら、「自分に自信がないからiPhone5の神通力に頼って少しでも己を大きく見せようとしている情けないヤツ」と思われそうです。いや、ムキになって早く手に入れようとしている人たちが、そういうヤツだと言っているわけでは、けっしてありません。