ライフ

新宿ゴールデン街には男を吸い寄せる伝説的な熟女が多数いた

 空前といっていい熟女ブームである。女性の側からはどう見えているか。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が考察する。

 * * *
 お笑い芸人、ピースの綾部氏・34歳と、若貴母の藤田紀子さん・65歳の熱愛報道で、一気に到来した観のある「熟女ブーム」。「実は熟女が好き」という男性が次々にカミングアウトし、市民権を得ているとも聞きます。

 天下のNHKまでが「眠れる森の熟女」というドラマを鋭意放映中。ブームの先端を走っているぞ、とプロデューサーはほくそ笑んでいる?

 でも、「熟女人気」は今に始まったことではないのかも。昔から日本に根付いていた文化のカタチかも。

 夕刻が訪れた駅前。どんなに寂しい街角にも、肩を並べる小さな飲み屋にスナック、バー。こんなたくさんの飲食業が、どうして不景気のさなかにズラリと並んで成り立っているのか、不思議に思ったことありませんか?

 カウンターのむこうには「ママ」がいる。仕事帰りのオジサンのつまらない愚痴や世間話にもちゃんと耳を傾けてくれる。気の利いた返事や、ちょっと耳の痛い意見まで、親身になって、あるいはそのようなそぶりで、頷き、相手をしてくれる。

「あゆみ」「のりこ」「ひろみ」「よしこ」……。全国各地、女性の名がついた飲み屋の看板にはこと欠きません。

 かつて日本を代表する著名な哲学者は指摘しました。「日本の男社会は壮大なマザコン文化だ。数々の『ママ』がいる店に、夜になると男たちが吸い寄せられるように集まってくるのを見ればわかる」と。

 飲み屋の「ママ」という熟女に甘えるメンタリティは、昔から今まで、脈々と引き継がれてきた文化です。たしかに、「熟女が好き」と若い男性が堂々と語れるようになった点だけは、時代の変化なのかもしれませんが。

 昨今の熟女ブーム、精神的には「ママ」に依存しつつも表層は若い女性ばかり珍重し、「30すぎたらババア」などと使い捨てにしてきた日本の男社会が、もし「大人の女の成熟を正当に評価し始めた兆し」だとすれば……スリリングな変化と言えるでしょう。

 しかし、持ち上げられている「熟女」たちも、「実年齢には見えないくびれボディ」「20代に劣らないバツグンのスタイル」「シワが目立たないアンチエイジング肌」がウリだとすれば……。結局のところ「若さの礼讃」。ちっとも目新しいことではありません。

 日本の熟女文化の歴史をちょっと紐解くと……新宿ゴールデン街の名が浮上する。今は雰囲気もずいぶん変わりましたが、かつては数々の有名「ママ」を排出した伝説的空間です。そこに入り浸っていた団塊の世代の証言によれば、ゴールデン街の「ママ」たちは、マザコンともアンチエイジングともひと味違った、独特の魅力を放っていたと言います。

 「政治、社会について語る力を持っていた」
「自分の意見を自分の言葉で表現した」
「年齢に依存していなかった」
「個性的な生き方を貫いていた」
「経済的に自立していた」……

 ゴールデン街には「成熟した大人の女が等身大で生きていた」日本では珍しい飲み屋空間だったのかもしれません。

 新たに沸騰した「熟女ブーム」、これから日本社会の中でどのように熟れていくのか。ゴールデン街に替わる、新たな熟女の舞台が登場するのか。興味深く観察していきたいと思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

4月クールに『アンチヒーロー』で主演をつとめた長谷川博己
ドラマ『アンチヒーロー』で衣装に関する“200万円請求書”騒動 長谷川博己のオリジナルコート制作費をめぐってスタイリストと制作サイドが衝突か
女性セブン
バチカンのモンテリーズィ枢機卿(左)にインタビューしたさかもと未明さん
【拉致問題解決への祈りは続く】さかもと未明さんが振り返る「横田夫妻との交流」と「バチカン枢機卿からの言葉」
NEWSポストセブン
佐賀空港を出発される愛子さま(時事通信フォト)
雅子さま「午後だけで4回もの休憩」不安視された22年ぶり佐賀訪問で初めて明かした「愛子さまとの私的な会話」
NEWSポストセブン
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
NEWSポストセブン
ドキュメンタリー映画『Screams Before Silence』でインタビューに応じるアミット(映画の公式インスタグラムより)
《55日間のハマス人質日記》囚われた女性が語る地獄の日々「生理の時期を毎日確認されて…」【音楽フェス襲撃から1年】
NEWSポストセブン
10月8日、美智子さまは「右大腿骨上部の骨折」の手術を受けられた(撮影/JMPA)
美智子さま「大腿骨の上部骨折」で手術 待ち受ける壮絶リハビリ、骨折前より歩行機能が低下する可能性も
女性セブン
結婚を発表したマイファス・Hiroと山本舞香(Instagramより)
《マイファスHiroと山本舞香ゴールイン》2人が語った結婚の決め手と夫婦像「作ったご飯を笑えるほどたくさん食べてくれる」 結婚記念日は新妻のバースデー
NEWSポストセブン
カニエ(左)とビアンカ・センソリ(右)(Getty Images)
「ほぼ丸出し」“過激ファッション”物議のビアンカ・センソリが「東京移住計画」ラッパーのカニエ・ウェストと銀座に出没、「街中ではやめてくれ」の指摘も
NEWSポストセブン
東北道・佐野サービスエリアの現在とは
《前代未聞のストライキから5年》激変した東北道・佐野SA「取り壊された店舗」名物「佐野らーめん」の現在、当時の元従業員が明かした39日間の舞台裏
NEWSポストセブン
Snow Manの渡辺翔太と向井康二
《Snow Man渡辺翔太&向井康二》“なべこじコンビ”のサウナ帰り姿をキャッチ 肩を組んだり輪になって話したり“素”の時間を満喫 
女性セブン
9月末に給料が未払いとなり、職員が一斉退職するという事態になった足立区の住宅型有料老人ホーム。千葉県内などにもある関連施設でも同じような”未払い”が発生しているという
《見捨てられた老人ホーム》東京・足立区で「人手が回らず餓死者が…」「お風呂も入れられない」給与未払いに社長は雲隠れ…元職員が明かした“現場丸投げ運営”の実態
NEWSポストセブン
田村家のお正月の風景。左・田村正和さん、右・田村亮さん
《『古畑任三郎』では今までにない自分を》俳優・田村正和さんの知られざる晩年「もうやりきった…」77才で他界した2人の兄を語る弟・田村亮
NEWSポストセブン