国内

大村崑氏「薄っぺらな若いお笑い芸人ばかりで情けなくなる」

 80歳以上限定のオピニオン企画「言わずに死ねるか!」は『週刊ポスト』の名物特集。今回は俳優の大村崑氏(80)が、昨今の“一発ギャク”が主流のお笑いブームに一石を投じる。

 * * *
 最近つくづく感じるのは、本物の喜劇人がいなくなったということです。ちょっと器用な素人がテレビで同じギャグを繰り返し、観客もそれが笑うシーンだと思い込んで盛り上がるから、ウケている、人気があるんだと勘違いしている。そんな薄っぺらな若いお笑い芸人ばかりで情けなくなります。

 笑いの基本はアドリブです。アドリブを身につけるためには板の上、つまり舞台で修行するのが一番。稽古の時でも、一生懸命アドリブをやって監督やスタッフにウケようと頑張るから伸びていきます。しかも本番の舞台は一発勝負。やり直しがきかないので緊張感が違います。

 それに比べてテレビは後で編集できるから真剣さが足りません。昔は生放送でしたから、何が何でも時間通りに終わらせるという緊張感がありました。本番中も丁々発止のアドリブをやり取りしながら、一方で時間を計算してやっているのですから鍛えられました。

 その緊張感の中で、喜劇にとって一番重要な“間”を身につけることができました。悲しいことに、喜劇とは“間”であるということを今の若いお笑い芸人たちは忘れています。

 本物の喜劇人は1日、2日で育つもんじゃありません。昔は北島三郎さんや八代亜紀さんたちの舞台で勉強したものです。涙と笑い、人情が凝縮された舞台に立って、北島さんや八代さんの芝居の中で、私たちも必死になってアドリブで返す。大事なのは、そのやり取りなんです。

 笑いの中には必ずペーソスが必要です。ペーソスが舞台に深みを生み出すのですが、今の若い芸人は「笑いは“笑い”だけ」と思っているからダメなんです。だから一発ギャグばかりで、テレビを消すと何も残らない。

【プロフィール】
●大村崑(おおむら・こん)/1931年、兵庫県神戸生まれ。1958年、テレビデビュー。『番頭はんと丁稚どん』『とんま天狗』などに出演。オロナミンC、ダイハツミゼットのCMなどで国民的タレントとなる。

※週刊ポスト2012年10月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ツアーを終え、ロンドンに戻った宇多田ヒカル(2024年9月)
【全文公開】宇多田ヒカル、新パートナーはエルメスの店舗デザインも手掛けたグラフィックアーティスト ロンドンでひとときの逢瀬を楽しむ適度な距離感 
女性セブン
かつてバンドメンバーだった桜塚やっくんとTaiga(右)
【目の前で目撃】37歳で急逝・桜塚やっくんの命日に元バンドメンバーが墓参り 事故当日の詳細を初告白「悔やんでも悔やみきれません」
NEWSポストセブン
4月クールに『アンチヒーロー』で主演をつとめた長谷川博己
ドラマ『アンチヒーロー』で衣装に関する“200万円請求書”騒動 長谷川博己のオリジナルコート制作費をめぐってスタイリストと制作サイドが衝突か
女性セブン
佐賀空港を出発される愛子さま(時事通信フォト)
雅子さま「午後だけで4回もの休憩」不安視された22年ぶり佐賀訪問で初めて明かした「愛子さまとの私的な会話」
NEWSポストセブン
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司組長だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
NEWSポストセブン
ドキュメンタリー映画『Screams Before Silence』でインタビューに応じるアミット(映画の公式インスタグラムより)
《55日間のハマス人質日記》囚われた女性が語る地獄の日々「生理の時期を毎日確認されて…」【音楽フェス襲撃から1年】
NEWSポストセブン
10月8日、美智子さまは「右大腿骨上部の骨折」の手術を受けられた(撮影/JMPA)
美智子さま「大腿骨の上部骨折」で手術 待ち受ける壮絶リハビリ、骨折前より歩行機能が低下する可能性も
女性セブン
結婚を発表したマイファス・Hiroと山本舞香(Instagramより)
《マイファスHiroと山本舞香ゴールイン》2人が語った結婚の決め手と夫婦像「作ったご飯を笑えるほどたくさん食べてくれる」 結婚記念日は新妻のバースデー
NEWSポストセブン
東北道・佐野サービスエリアの現在とは
《前代未聞のストライキから5年》激変した東北道・佐野SA「取り壊された店舗」名物「佐野らーめん」の現在、当時の元従業員が明かした39日間の舞台裏
NEWSポストセブン
カニエ(左)とビアンカ・センソリ(右)(Getty Images)
「ほぼ丸出し」“過激ファッション”物議のビアンカ・センソリが「東京移住計画」ラッパーのカニエ・ウェストと銀座に出没、「街中ではやめてくれ」の指摘も
NEWSポストセブン
田村家のお正月の風景。左・田村正和さん、右・田村亮さん
《『古畑任三郎』では今までにない自分を》俳優・田村正和さんの知られざる晩年「もうやりきった…」77才で他界した2人の兄を語る弟・田村亮
NEWSポストセブン
9月末に給料が未払いとなり、職員が一斉退職するという事態になった足立区の住宅型有料老人ホーム。千葉県内などにもある関連施設でも同じような”未払い”が発生しているという
《見捨てられた老人ホーム》東京・足立区で「人手が回らず餓死者が…」「お風呂も入れられない」給与未払いに社長は雲隠れ…元職員が明かした“現場丸投げ運営”の実態
NEWSポストセブン