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乳がん診断後の乳房再建手術が少数派である理由を医師解説

 抗がん剤治療、放射線治療など、乳がんにはさまざまな治療法がある。メインとなるのは「切除手術」だ。

 切除手術は、まだ医療研究が進んでいなかった30年ほど前、乳房だけでなく胸筋まで切除する「ハルステッド手術」や、リンパ節までえぐりとる「拡大乳房切除術」が主流だった。がんが転移する可能性のあると考えられていた部位はすべて切除していた。

 しかし、胸筋やリンパ節を残しても生存率が変わらないことがわかってからは「温存手術」が一般的に。

 今、いわゆる「温存」といわれるのは、乳房の一部を残す「乳房温存手術」をさす。

 日本では現在、可能な限り「温存で」という考え方が主流。その目安はしこりの大きさが「3cm未満」とされている。

 ただし、温存手術では再発のリスクがあるため、その後も放射線治療を行う必要がある。さらに、ブレストサージャリークリニックの岩平佳子医師はこう話す。

「温存というと胸の形がそのまま残るようなイメージがありますが、そうではありません。例えば、胸の4分の1を取る温存手術では、その部分の膨らみがなくなります。胸の小さいかたほど、形がいびつになってしまいます」

 一方、一般に「全摘」といわれるのは、胸筋を残して、乳房はすべて摘出する「胸筋温存乳房切除術」のこと。しこりが大きい場合は、この全摘を選択するケースが多い。ただし、全摘を受ければ胸のふくらみは完全に失われてしまう。

 その状態でもよいという考えもあるが、最近では、乳房をもう一度つくる「再建手術」を選択する女性も増えている。

 再建手術には、「自家再建法」と「インプラント法」の2種類がある。自家再建法は、背中やお腹など自分の体の他の部分の皮膚と皮下脂肪などを胸に移植する方法。保険が適用されるので、費用は約30万円程度で収まり、胸の軟らかさや温かさも得られる。

「ただし、体の他の部分を傷つけるため、2週間の入院期間と、その後も数か月の通院が必要。社会復帰までに非常に時間がかかるというデメリットもあります」(ナグモクリニック総院長・南雲吉則さん)

 一方、「インプラント法」は、全摘後に残した胸筋の下に、円形のシリコン性のジェルバッグなどを入れる方法。一般的には、「がんの切除手術」と「胸の皮膚を伸ばす拡張器の挿入」を行った後、半年ほどしてからシリコンを入れる。

 しかし、前出・南雲さんは、体への負担が少ない方法として、「がんの切除手術」と「シリコンを入れる手術」を1回で済ませる「同時再建手術」を推奨している。ただし、シリコンによる再建は、保険が利かないため費用は計60万円台と高額。こうした保険の問題のほか、再建手術がいまだ少数派である理由として、南雲さんは次のような課題を挙げる。

「がんを摘出するのは乳腺外科医。シリコンを胸に入れるのは形成外科医。同時再建をするには、この両方の医者が連携することが欠かせませんが、それがうまくいっていない病院が多い」

※女性セブン2012年10月25日号

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