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今や専門店まである一人カラオケ ゆとりやノマドも積極活用

 いま“ヒトカラー”が増えている。一人でカラオケを楽しむ人のことだ。おひとりさまブームで、数年前から珍しいことではなくなっていたが、カラオケ店が「ヒトカラ」に対応した店舗作りを進めることで、定番化しつつあるようだ。

 全国カラオケ事業者協会によると、2011年度の平日の1人客は約2割。その数は増えており、時間帯や店によっては、1人客が半数になることも少なくないという。カラオケ人口は1995年度の5850万人がピークで、その後、減少傾向が続き、2011年度は4640万人に。頭打ちが続くなか、一人客の取り込みは、業界にとって至上命題でもある。

 カラオケ店舗数で日本一、「からおけ本舗まねきねこ」を展開する(株)コシダカは、ひとりカラオケ専門店「ワンカラ」の第1号店を2011年11月東京・神田にオープン。今年に入って6店舗まで増やした。「ピット」と呼ばれる個室には高性能マイクが設置されており、客はヘッドホンを着用、さながら“レコーディング”のように歌う。疲れたら、無料のカフェスペースで一息。料金は1時間600~1100円(時間帯と部屋による)と、他店に比べて決して安くはないが、週末には満室になることもあるという。

 秋葉原に店を構える「カラオケ アドワーズ」は、3~10階までのカラオケフロアのうち、9、10階を「一人カラオケ専用フロア」とした。電子楽器の演奏を楽しむこともでき、動画の撮影も可能。日中は楽器を持ちこむ若い男性で溢れる。

 もちろん、本格的に歌いたい、というヒトカラーばかりではない。

 都内で働く30代のOLは、会社帰りのクールダウンにカラオケ店を訪れるという。「夜、12時ごろ、疲れて地元の駅に着くと、あぁ、一杯飲みたいなぁって思うんです。でも、一人で飲んでも、誰とも話さないから発散しきれない(笑い)。カラオケに行けば、飲んで、歌ってすっきりして、家に帰ったらすとんと眠れます」。彼女が訪れる店舗は、一人客に配慮し、受付を複数人客と分けている。

 流行のノマド・ワーカーにも、カラオケ店は重宝しているようだ。先に紹介したアドワーズをはじめ、カラオケにもWi-Fi設置が進む。仕事でカラオケを利用するという40代男性は、「カフェで電話するのはやっぱりマナー違反ですよね。その点、カラオケなら気兼ねなく話せるし、疲れたら一曲歌って気分転換もできる」と話す。

「ヒトカラ」が増加している背景にはこのように、カラオケ以外の用途でもカラオケが楽しめるようになってきていることもあるようだ。

 ちなみに希少ではあろうが、こんなケースも。パセラリゾーツ御茶ノ水店では、“あの名店からインスパイア”と名うった「ラーメン パ朗」が話題を呼んでいる。「ラーメン目当てのお客さんもけっこういます」と店員さん。860円の本格派だ。高カロリーと思しきラーメンだが、歌ってカロリー消費できるから心配無用か。

 一方、ヒトカラを楽しむ消費者側にも、意識やニーズの変化があるようだ。消費者行動に詳しいニッセイ基礎研究所研究員の久我尚子氏はこう語る。

「『おひとりさま』という言葉が登場した2005年頃は、主に独身の女性を指す言葉でした。ですが、一人行動が一般化するなかで、意味合いが変わってきたんですね。いまは『一人になりたい』『コミュニケーションを断ちたい』という理由から、一人で行動することが『おひとりさま』になりつつあります」

 あえてのおひとりさま。そうする理由は2つあるという。

「一つはフェイスブックなど、ソーシャルメディアの普及によって、四六時中、人とつながっていられる状態になったこと。そうした状態に疲れ、たまには一人の空間に身を置こうとする人が増えています。もう一点、これは若者に限ってですが、以前、食堂で一人でお弁当を食べられない学生が問題になったように、ゆとり世代は、周りの目を気にしがち。だから空気を読もうとするんですね。人目のないカラオケの個室は彼らにとって、解放の場所なのかもしれません」

 かつて一人カラオケは、友人と行く前の練習や、友人と予定が合わないが一人でも行くものだった。いまや一人で“こそ”行くカラオケに――。新たなカラオケ市場が生まれつつあるようだ。

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