ライフ

商いのパワースポット「酉の市」 ごった返す熱気を作家が分析

商売繁盛を祈り人々が集う酉の市

 最近の和ブームで日本の祭りが息を吹き返しつつある。商売繁盛を願う酉の市について、作家で五感生活研究所の山下柚実氏が分析する。

 * * *
 おかめに米俵に七福神、宝船に千両箱。華やかな飾りがてんこ盛りの熊手。浅草・鷲神社の境内に、天井へ向かって何段も何段もディスプレイされた「熊手の迷路」が出現します。

 熊手を売る店の数は、なんと100軒以上! 実にフォトジェニック。各テレビ局がこぞって中継したくなるのも、なるほどうなずけます。

 今年もとりのいち、通称「おとりさま」がやってきました。一年の無事を感謝し、来年の幸と商売繁盛を願う、江戸時代から続く伝統の年中行事。「熊手で福を掻き込もう」「酉で福をトリこもう」と縁起をかつぐ日。今年は、11月8日が一の酉、20日が二の酉にあたります。 

 「人並に押されてくるや酉の市」

 高浜虚子の句にもあるように、商売繁盛を祈って縁起物の熊手を買い求める人で境内はごった返します。縁起ものの熊手は、商売が拡大するにつれて、だんだんに大きなものへと買い換えていくのがお定まり。大きな熊手のお値段は交渉で。商談がまとまったり、ご祝儀が出ると、「ヨー、パパパンッ」と、手締めが響き渡る。そのキリッとした音が実に気持ちいい。

 一時期は「縁起をかつぐ」こうした年中行事に人々の関心が向かわなくなった時代がありました。異国の文化ばかりを追いかけて、「年中行事なんて古くさい」と、日本人の興味が別の方向へ向いてしまった時代も。

 しかし、最近は和ブーム。日本の伝統文化を見直す気運も高まり、各地の祭りが息を吹き返しています。特に庶民の縁起担ぎ・酉の市は朝からテレビで現場中継され、我も我もと熊手を買う人が押し寄せて、熱気ムンムン。商売繁盛を祈る人々の姿の背後に、社会の変化も見てとれるのかもしれません。

 日本を代表する大企業が巨大な赤字にあえぎ、リストラの嵐が吹き荒れる昨今。いつ自分の会社がつぶれるか、クビになるかと、不安を抱えて生きるよりは、いっそのこと、ネット通販でささやかな商売を始めよう。小さな商いでいいから、店を持とう。好きなことを商売にして生きていく道を探ろう。そんな気分がじわりじわりと浸透しています。

 恋愛成就を祈ってパワースポットに押しかけるのもいいけれど、明日への希望を託して「商いのパワースポット」へと足を運んでみるのも、オツなのかも。

 11月20日は「二の酉」です。浅草・鷲神社の他にも、新宿の花園神社、足立区・大鷲神社、目黒区・大鳥神社、大田区・大森鷲神社 、横浜市・大鷲神社、名古屋では大須七寺の酉の市などなど、各地で開催されます。


関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン