中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
何かを調べるときは、まず、ネットから、とくに最近はSNS、しかもサクッと見やすい動画を参考にする人がいまは多いだろう。だが、それだけを情報源にするのは危険で、根拠がない極端な内容である可能性がある。無責任な動画がバズったために発生した実害を、ライターの宮添優氏がレポートする。
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就職活動や転職活動で新しい職場を探すとき、ハローワークに出向いたり、就職・求人サイトを使って情報を得るのが主流だろう。それらに加えて最近では、企業側がSNSを用いて情報発信をし、求職者に直接、映像やテキストで会社の魅力を伝える事例が増えた。都内の大手人材会社社員が言う。
「いわゆる”就活サイト”を使った就職活動は今もメジャーですが、企業側が我々のような事業者を通さず、直接、求職者にアピールする取り組みは多くの企業で行われています。また、SNS上では、表に出てこない会社の評判、口コミなども活発に投稿されており、就職活動中の学生や転職者にとって有益な情報となっています」(人材会社社員)
偽情報が発端で条件を満たさない採用希望者が激増
求職者が、よりくわしい様々な情報を得られることそのものは、一見すると良いことではある。が、その情報が真実かどうかまでは、求職者には判断し難い場合もあるようだ。都内の海運会社で人事担当が嘆く。
「急に応募者が増え、当初は理由もわからず喜んだのですが、まさか”デマ”が発端だとは知らず、落ち込みました」(海運会社の人事担当者)
世間では「中堅」の海運会社とされる男性の勤務先。給与水準が低いわけでもないが、それほど高いわけでもなく、男性自身、20年以上勤務した会社を「ホワイト企業」だと思ったことは一度もない。当然、学生の「人気就職先」として上位に選ばれることもなく、採用活動は毎年、苦労の連続だった。もちろん、SNSを使った情報発信にも力を入れ始めていたが、人事部の担当者が細々とやっているだけで、効果が上がっているとは言えない状況だった。そんなある日、出社すると、人事部の部下が血相を変えて、担当者のもとにやってきた。