国内

孤独死した人の遺骨 引き取り手がいない場合の行き先は役所

 近年、“孤独死”に言われる悲しい最期を迎える人が増えている。法律上は「行旅死亡人」と呼ばれる彼らの姿に、作家の山藤章一郎氏が迫った。

 * * *
本籍、住所、氏名、年齢、不詳
身長171cm
身体的特徴 黒色頭髪 中肉
着衣 白色タンクトップ 青色ジーンズ生地のハーフパンツ
所持品 スポーツバッグ1個(トランクス5枚 靴1足 サンダル1足他)

 上記の者は、平成24年7月24日午後0時15分頃、市内浜地区にあるビジネスホテルの客室内で発見されたものです。遺体は火葬に付し、遺骨は至徳寺に安置しております。心当たりの方は当市福祉援護課まで申し出てください。

 京都府舞鶴市市長 多々見良三

〈行旅死亡人〉と呼ばれる遺体である。官報に載って引き取り手を待つ。貧困、格差の底で、この死亡者が急増している。死後4日以上で発見される65歳以上が、年間1万5000人もいる。毎年、4万件を超す熟年離婚の末、高齢独身で、認知症、貧困など、肉体的金銭的苦闘を強いられて果てる人も少なくない。

 さらに30代、40代、ひとりでいるのが心地いい世代が〈行旅死亡人〉をたどる例も増えてきた。買い物はコンビニ、食うのはファストフード。他人とのつながりはネット、ケータイ。そして収入はぎりぎり。誰も訪ねて来ないから、部屋は踏み場もないごみの山。やがて自己放棄に陥って孤独死する若年層のことである。墓などむろんない。

 10年前には考えられなかった事態が進行している。孤独死は、区役所、市役所が警察から〈死体連絡表〉を手がかりに親族に連絡する。だが、たとえば、東京に出て結婚式で1度会ったきりの親類の男など、誰も引き取らない。

 杉並区のアパートで氏名、年齢不詳の男が死んでいた。部屋に母親らしきものの遺骨の壺がある。区役所は、男の田舎の遠縁を割り出して連絡をつけたが、〈拒否〉。仕方なく本人の骨は区役所が、母親の壺は〈特殊清掃業者〉が、引き取ってくれる篤志の寺に送った。宅配便の送り状に内容を記した。「陶器1個」。

※週刊ポスト2012年11月30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見なえい恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン