ストーブリーグ真っ只中の野球ファンにとって、契約更改は大きな楽しみの1つ。一般庶民は、1000万単位で年俸が上下する彼らの姿を、指をくわえて見ているしかないわけだが、そもそも年俸はいかにして決められるのか。現在は基本的には点数制で決まる。その詳細について、かつて阪神で球団社長を務めた、野崎勝義氏に話を聞いた。
「査定はマイナスもありますが、基本的にはプラス査定が中心。細かい採点を積み重ね、選手から文句の出ないようにしています。選手の年俸額の総計は球団ごとに限度があり、各選手の額は事前に球団本部会議で決め、オーナーの許可を取ってあります」
査定は、プロの経験がある担当者が全試合でスコアをつけながらプレー内容をチェックする。ヒット1本でも先取点につながった1本か、散発に終わった1本か、サヨナラで試合を決めた1本かで点数は変わる。試合後には監督やコーチと面談して、一塁ゴロがベンチの指示による進塁打だったか、空振りが盗塁を助けるためのサインによるものだったかなどを確認して、厳しく査定していく。
「難しいのは、例えば同じプラス1000点としても、入団2年目と10年目の選手では、どうしてもベテランの方が評価額は高くなる。過去の貢献も積算されるので、年功序列の要素も加わってくるのです」(野崎氏)
契約更改は二軍選手から始まり、大物は後回し。大物にはぶっつけ本番ではなく、事前交渉を行なうのが一般的だ。だからこそ一発契約ができる選手も多いといい、それがイメージアップに繋がることもある。また、外国人選手や大物ベテラン選手には、数値目標を設定、成功報酬として支払うインセンティブ契約が認められている。
「本人には目標ができ、球団はリスクを減らせる利点がある。本来なら全額をインセンティブで契約したいところですが、野球協約で最低年俸が決められているためできない」(野崎氏)
※週刊ポスト2012年12月14日号