ライフ

七草粥 食べると邪気を払い、顔色良くなるとの言い伝えあり

七草粥には年末年始で疲れた胃を休める効果

 2013年はどんな「食」が登場するのだろうか。食の伝統と文化について、編集・ライターの松浦達也氏が考察した。

 * * *
「年明けうどん」「おせちもいいけどカレー」など、この数十年で正月の食卓の風景はずいぶんと変わった。といっても、この数十年が特別というわけではない。日本人の食卓は数十年周期でゆるやかに変わり続けている。中華料理店が日本に定着してからおよそから揚げや餃子などが、当たり前のように一般家庭の食卓に上るようになって、まだ50年ほどしかたっていない。同じく中華料理を起源とするラーメンがご当地色の強い麺料理として認知されていったのもその頃だ。

 新しい料理が定着すると、肩身が狭くなっていく食文化もある。とりわけ「伝統食」はそのあおりを食らいやすい。素材の入手や調理に手がかかったり、味わいとして「わかりやすい旨さ」とは一線を画すものも多い。

 そもそも「食文化」とはなんだろう。大辞林で「文化」を引くと「社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式ないし生活様式の総体」とある。つまり、「食文化」とは「社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される、『食』にまつわる行動様式ないし生活様式の総体」となる。

 食関連の有識者はそこに「習慣」「伝承」「定着」といった価値観を盛り込み、「世代を超えて定着するもの」と絞り込んだ定義をすることが多い。しかし核家族化の進行によるコミュニティの変化や、生活様式の消費・再構築のスピードが上がっているため、定義自体が追いつかなくなっている。とりわけ、「庶民の食」≒「B級グルメ」においては情報の流量が莫大になり、ネットコミュニティなども含め、文化を醸成する土台が変わりつつある。

 例えばいま絞り込むなら「多様化する生活様式のなか、家庭/地域といった実態生活圏だけでなく、あらゆる社会的集合体で共有できる、習慣や嗜好などに由来する食生活全般」というような形になるだろうか。

「嗜好」が文化の域に届くこともある。例えば「ラーメン」はもはや文化だろうし、主要な「ご当地ラーメン」も文化と言えるだろう。数年後には「(ラーメン)二郎系」が文化になっているかもしれない。

 だが一方、長く受け継がれてきた「習慣」には何かの意味がある。なぜ1月7日に七草粥を食べるのか。現代では「年末年始で疲れた胃を休める」と解釈されるが、そもそもこの日は「人日の節句」であり、七草を粥に炊きこんで食べることで、邪気を払い、「顔色光沢なり」など10の功徳が得られるという。ちなみに七草を浸した水に爪をつけて、やわらかくしてから爪を切ると、その年は風邪をひかないという言い伝えもある。

 今年も数多くの新しい「食」が登場するだろう。そしてそのすべては文化になりうる可能性を秘めている。文化としての認知は「いい」「悪い」で判断されるものではないが、個人としては「いい」と感じられる食文化のなかで暮らしていきたいものだ。

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン