ライフ

ぎんさん95才三女 母のように“ああ面白かった”で死にたい

「きんは100シャア、ぎんも100シャア」そんな名セリフで日本中を沸かせた双子の100才、きんさんぎんさん。あれから20年が経ち、ぎんさんの4人の娘たちも今や平均年齢94才。今年2013年は“あんねぇ”こと長女・年子さんが数えで100才を迎える。年子さんが「私は、今年こそ死ぬよぉ」と言ったのを合図に、4姉妹の“終活”談議が沸騰した。

千多代さん(三女・95才):「あんねぇは米寿を迎えたころから、ずーっと“死ぬ”って言い続けてきたが、年を追うごとにピンピン元気になって、ちぃとやそっとで死にやせんでぇ」

美根代さん(五女・90才):「ほんと、なかなかくたばらん。私ら4人のテーマは、どうしたらピンピンコロリで、この世とサヨナラできるか(笑い)。これを考えんといかんだがね」

百合子さん(四女・92才):「そう、そのとおり。寝たきりだけは嫌だがね」

 誰もが人生の晩年、寝たきりにはなりたくないと思うが、現実には介護を必要とする人は年々増えている。厚生労働省の調査によると、介護保険の「要介護5」の認定を受けた人は、2000年で約29万人だったのが、2010年には52万人超と倍近くにまで膨れ上がっているのだ。

美根代さん:「こないだテレビでね、どっかの大学の先生が言うとったが、着るものに気を使わんようになったら、寝たきりになる前兆なんだって。ほら、ひとり暮らしなんかだと、朝、起きても、ああ、面倒くさいちゅうて、パジャマのままで過ごすことになるだがね」

千多代さん:「そうだな、そうなると外に出るのが億劫になって、だんだん足腰が弱って寝たきりにつながるにゃあ」

百合子さん:「家の外に出ないようになってしもうたら、ピンピンコロリの前におしまいだよ。あとは坂道を転げ落ちるように歩けなくなっていって、もう元には戻れん。これがおそがい(怖い)よ」

年子さん(長女・99才):「ひゃぁーっ、私はその反対で、ときどき夜寝るときにな、パジャマに着替えるのが面倒で、昼間の服のまんま布団に入ることがある」

美根代さん:「そりゃあ“着たきり雀”だがね(笑い)。やっぱし、きちんと着替えて生活にメリハリつけんと、あんねぇは寝たきりになるよ」

 この妹の忠告に、あんねぇの年子さんは首をすくめたが、それからも姉妹たちの話題は、“終活”に向かってとめどなく続いた。

百合子さん:「もう、この年になったら、死ぬということへの恐怖みたいんはなくなった。だけんど、もしも寝たきりになって、延命治療とやらでいつまでも生かされるのは、どうにも我慢ならんがね」

千多代さん:「そう、お迎えのときが近づいて“ありがとう”と言うてあの世へ行こうとしとるのに、ほれ強心剤だ、やれ点滴だ、心臓マッサージだちゅうて、無理やり引き止められるのは、ご免こうむりたいと思うだが」

年子さん:「あっちへ行こうというのに、襟髪つかんで引き戻されるのはかなわんにゃあ。点滴のチューブに縛られて、気がついたらまだ生きとる。これぇ、死ぬちゅうこともたーいへん、大仕事だよ(笑い)」

美根代さん:「そいだで私は、自分でものを食べられんようになったら、放っておいてくれと、息子夫婦に頼んである。喉に穴を開けられ、流動食を注がれて生きるより、私は自然に命がしぼんだほうがいい」

 医療的に、あるいは道義的に“命の尊厳”という観点から、延命治療の是非は難しい問題だが、4姉妹の思いは一致しているようだ。

 そんな姉妹たちの目に、今も鮮やかなまでに焼きついているのが、母・ぎんさんの見事なまでの“終焉”だった。

 2001年2月、108才で大往生したぎんさんは、亡くなる5日ほど前、縁側で娘たちとお茶を飲みながら、空を見上げて呟くようにこう言った。

<面白いことが、いっぴゃああったなも。そろそろお迎えがござるだが>

 それから3日間、ぎんさんは寝込んだが、最期は眠るように息を引きとった。

千多代さん:「おっかさんが羨ましいよ。できるもんなら、わしらも“ああ、面白かった。はい、これでおしまい”と言うて、この世を終わりたいだがね」

※女性セブン2013年1月24日号

関連キーワード

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン