炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
被災者や経済的困窮者へ向けて炊き出しを行っているのは、寺社や教会など団体などのほかに、ボランティア団体によるものがある。最近、増えているのが、地域で育ったり、仕事をしている青年たち、とくに少年時代はやんちゃだったという人たちが中心となった勝手連のようなグループによるものだ。震災をきっかけに、人助けへの素朴な願いから始めたという人が多いが、それも年月を経たことで、一部でややこしい事情が発生しはじめている。ライターの宮添優氏が、炊き出しボランティア活動の背景で何が起きているのかをレポートする。
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神奈川県内の某オフィス街近くの公園に、突如、周囲の風景にあまり馴染まない格好の、十数人の中年男性の列が現れた。さらにその列にの所々には、かなり派手なヤンキー風ファッションに身を包んだ、20代から30代くらいのコワモテ男性が仁王立ちしている。通行人のほとんどが、視線すら寄越さず、足早に立ち去っていく。
「今回ここは初めてなんですけどね、多いんすよ、ホームレス。だから、これやれば結構人が集まるんすよ」
ここで行われていた「炊き出し」の主催関係者である男性(30代)は、地元の暴走族出身。暴力団組織に属したことはなかったが、複数の組関係者とも様々な接点を持っていた、今でいう「半グレ」のような立場で青春時代を過ごした。暴力行為などで逮捕された経験もあるが、現在は建設業のほか、飲食店経営や不動産業にも手を拡げる実業家だ。
「ヤンキーってボランティア好きじゃないすか(笑)。俺の初(ボランティア)は、東日本大震災の時、仲間と茨城の北の方まで物資届けに行った時じゃないすかね。知り合いからバン借りて、カンパ集めて物資買って詰めて、地震でガタガタの高速をぶっ飛ばしました。福島に行くつもりだったんですけど、手前で止められた。でも、茨城にも困ってる人たくさんいて。熊本(地震)も能登(地震)も行った」(炊き出し関係者の男性)
リクルーターが入り込んでいた
大震災が起こると、その後必ず不良風の集団が「ボランティア」に勤しむ姿を、筆者もこれまで何度も目撃している。実業家の男性は「カンパ」というが、こうした場合のカンパは、厳しい不良の上下関係の影響で事実上の強制となる。男性も「身銭を切っている」というが、なぜそこまでしてボランティアに勤しむのか。