国際情報

中国兵器 外見は西側兵器似も中味劣るプラモデルと軍事通

 東アジアから米軍を追い出さんとする勢いの中国人民解放軍だが、その実力は本当に周辺諸国の脅威たるものなのか。軍事ジャーナリスト、清谷信一氏が人民解放軍の兵器技術力を分析する。

 * * *
 中国の2011年度の国防費は5836億元(約7兆2000億円)となった。過去5年で2倍、過去20年では約18倍だ。この公表された数字には研究開発費や一部の装備調達費は含まれておらず、本当の国防費は公表金額の2~3倍と見られている。

 中国は現在、核弾頭を搭載した弾道ミサイル24発の照準をわが国に合わせ、空母の建造にまで乗り出した。  

 これらの事実から中国の脅威を煽る傾向が強いが、その脅威がどれくらい脅威かは、冷静に分析すべきである。そのためにまず、中国の兵器開発の背景を知っておく必要がある。  第2次大戦後、中国は当時のソ連から技術を導入して、ソ連製兵器をコピーしていた。

 ところが、1960年代に入ると中ソ関係が悪化し、ソ連製兵器の導入ができなくなった。そこで中国は西側諸国に接近する。1970年代には米国との国交正常化、日本との国交回復によって、西側資本が中国に進出し、同時に軍事技術も移転し始めた。

 ヨーロッパ、とくにフランスは積極的に中国への兵器輸出を行なっていた。だが、1989年に天安門事件が発生。制裁として西側諸国は中国への技術移転や輸出を禁止した。ただし、軍民両用のデュアルユースは制裁措置の枠外として輸出可能だったため、1990年代もそれなりにヨーロッパの技術が入っていた。トウ小平の経済優先時代とシンクロして中国の工業全体のレベルが上がり、兵器の質も上がってきた。

 1990年代後半、中国の兵器技術力の上昇は徐々に欧米の脅威となった。2000年代にはアフリカや東南アジアの兵器市場で競合するようになってきたため、EU諸国は中国への軍事技術の供与を避けるようになった。

 ロシアはソ連時代から中国を警戒していたわけだが、関係悪化の中でソ連は崩壊し、背に腹は代えられず兵器を売り、中国はそれを許可もなくコピーした。

 中国はロシアのコピー兵器をよりによってパキスタンに作らせ、ロシアに支払っていないライセンスフィーをパキスタンから取った。パキスタンで作ったものはイスラム諸国に輸出されるため、ロシアにとって中国は「商売敵」になり、ロシアからの武器輸出や技術供与は再び絞られた。

 EUも兵器のコアとなるコンポーネント(部品)は渡さなかった。たとえば、装甲車のエンジンは売ってもトランスミッションの技術供与はしなかった。現在でも中国はオートマチックのトランスミッションを作る技術はない。

 したがって、外見だけ見れば西側の装甲車と見紛うほどのものを作るが、技術的にはまだまだ劣っている。各国の兵器見本市に行き、西側諸国の兵器を詳細に観察、トレンドを認識しながら西側的なものを取り入れ、外観だけ西側諸国の兵器を真似ているにすぎない。いわば“プラモデル”のようなものだ。

※SAPIO2013年2月号

関連キーワード

トピックス

TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
月9ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』主演の中井貴一と小泉今日子
今春最大の話題作『最後から二番目の恋』最終話で見届けたい3つの着地点 “続・続・続編”の可能性は? 
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一
《どうなる“新宿DASH”》「春先から見かけない」「撮影の頻度が激減して…」国分太一の名物コーナーのロケ現場に起きていた“異変”【鉄腕DASHを降板】
NEWSポストセブン
日本のエースとして君臨した“マエケン”こと前田健太投手(本人のインスタグラムより)
《途絶えたSNS更新》前田健太投手、元女子アナ妻が緊急渡米の目的「カラオケやラーメン…日本での生活を満喫」から一転 32枚の大量写真に込められた意味
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
中世史研究者の本郷恵子氏(本人提供)
【「愛子天皇」の誕生を願う有識者が提言】中世史研究者・本郷恵子氏「旧皇族男子の養子案は女性皇族の“使い捨て”につながる」
週刊ポスト
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
《セクハラに該当する行為》TOKIO・国分太一、元テレビ局員の年下妻への“裏切り”「調子に乗るなと言ってくれる」存在
NEWSポストセブン
1985年春、ハワイにて。ファースト写真集撮影時
《突然の訃報に「我慢してください」》“芸能界の父”が明かした中山美穂さんの最期、「警察から帰された美穂との対面」と検死の結果
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらっているんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
ブラジル訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《クッキーにケーキ、ゼリー菓子を…》佳子さま、ブラジル国内線のエコノミー席に居合わせた乗客が明かした機内での様子
NEWSポストセブン