中国人民解放軍は数の上では自衛隊の10倍の兵力を有している。しかし、いま中国軍と自衛隊が戦火を交えれば、中国軍に勝ち目はないと元航空幕僚長の田母神俊雄氏は指摘する。兵士の技量や練度が自衛隊員に遠く及ばないからだという。
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統合幕僚学校の校長をしていた8年前、陸海空の一佐二佐の学生を連れて、北京郊外の航空団を訪問したことがある。その時、航空団司令に「パイロットは1年間にどれくらい飛行訓練をするのか」と尋ねた。すると司令は一瞬言いよどんで、「だいたい100時間ぐらい」と答えた。
バツの悪そうな顔をしていたので、実際にはおそらく100時間にも満たないのだろう。仮に100時間だったとしても、月に約8時間でしかない。航空自衛隊の若手パイロットだったら、その2倍は飛ぶ。
聞くところによると、北朝鮮のパイロットの飛行時間は年間20時間ぐらいだそうだ。これは技量的には離発着と遊覧飛行しかできないレベルだ。それよりは多いが、100時間を下回る飛行時間では満足な訓練ができるはずがない。
なぜ飛行訓練時間が少ないのか。まず考えられるのはカネの問題である。自衛隊の要撃戦闘機F15は戦闘モードで飛行訓練をすると、1機当たりの経費が1時間で約200万円かかる。内訳は約8割が部品代、残りの約2割が燃料代だ。
航空機は部品ごとに耐久性が違い、100時間飛行したら部品Aを交換しなさい、200時間飛行したら部品Bを交換しなさいといったことが、きめ細かく決められている。交換を怠ると老朽化して墜落事故を起こしかねない。特に戦闘機は振動が激しいからエンジンを支えているビスなどが折れやすいのだ。カネがなくて飛行訓練ができないとすれば、燃料代がないのでなく、部品交換が十分にできない可能性が高い。
※SAPIO2013年2月号