ライフ

カルシウム摂り過ぎると死亡率2.6倍の根拠を医療専門家解説

「私は毎日小魚を食べてますし、ヨーグルトは大好物。お風呂上がりの牛乳も欠かしません。丈夫に育ってほしいから、子供にも毎朝欠かさず牛乳を飲ませています。カルシウムはたっぷり摂らないと…ですよね?」(50才・専業主婦)

 こんなふうに心がけている人は多いはず。カルシウムは骨や歯を丈夫にすることはもちろん、神経の伝達や筋肉の収縮など、人が生きる上で欠かせない栄養素というのが“常識”だからだ。

 ところが今年2月、「カルシウムを摂りすぎると死亡率が約2.6倍になる」という驚きの研究が発表された。

 骨を強くしたり、骨粗鬆症を予防したりするために、積極的にカルシウムを摂取するよう言われてきたのに…。

 この衝撃的な研究報告を発表したのは、スウェーデンにあるウプサラ大学の研究チーム。今年2月にイギリスの医学雑誌に研究結果が掲載された。

 50才以上のスウェーデン人女性6万1443人の食事を平均19年間にわたって追跡調査。その結果、通常の食事で1日1400mg以上のカルシウムを摂取していた女性は、摂取量が欧米の標準値である600~1000mgの女性に比べ、死亡率が1.4倍も高かった。

 さらに、通常の食事にサプリメントを加えて1日1400mg以上のカルシウムを摂っていた女性は、なんと死亡率が2.57倍に跳ね上がったのだ。

 この研究で死亡リスクを上昇させたのは、心筋梗塞、狭心症などの「心血管疾患」だった。なぜ、体に不可欠の栄養素であるはずのカルシウムが「死」につながるのか。

 東邦大学医療センター佐倉病院教授の東丸貴信さんは、その理由をこう解説する。

「体内のカルシウムの99%は骨や歯に存在し、残り1%は血液や筋肉など体内のさまざまな器官にあるのですが、カルシウムを過剰に摂取すると、血中のカルシウム濃度が上がり、血液がドロドロになってしまいます。

 同時に、カルシウムが血管の細胞や組織に付着して固まったり(=石灰化)、プラーク(脂肪などの塊)という堆積物をつくりだすことで動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞などを発症すると考えられます。サプリは一般の食事より吸収率が高く、服用すると血中のカルシウム濃度を急激に高めるため、体に影響が出やすいと考えられます」

 今回のスウェーデンの研究では、50才以上の女性が対象だった。しかし、同様のリスクは、老若男女関係なく存在すると、東丸さんは言う。

「たとえば、30~50才以上の女性を対象としたニュージーランドの研究では、カルシウムサプリの過剰摂取により心筋梗塞のリスクが25%高まると指摘しています。年齢や性別に関係なく、カルシウムの過剰摂取は深刻な疾患を引き起こすリスクがあると世界で認められているのです」

 特に、30~40代は注意が必要だ。骨粗鬆症を防ぐにはカルシウムの摂取が必要とされているので、予防のつもりで若いうちからカルシウムを多めに摂取している女性が少なくないからだ。また、東丸さんはこうも語る。

「ただし、通常の食事でたくさん摂る分には、サプリほど急激に血液中のカルシウム濃度が上昇するわけではないので、あまり気にする必要はありません」

 高齢化社会の進行により、現在日本には約1100万人もの骨粗鬆症患者がいて、そのうち女性は約700万~800万人と推定されている。サプリを使う人も多いが、医者の適切な指示なしに、そればかりに頼るのは危険ということだ。

※女性セブン2013年3月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン