新しい本屋ができたと喜んだが……(写真提供/イメージマート)
衛星画像で山奥にポツンと見つかる建物を探して住人に会いに行くテレビ番組が人気だが、最近は、人通りが多い場所にあるのが普通だろうと思われてきたものが、住宅もまばらな地域でもポツンと見つかることがある。ライターの宮添優氏が、郊外や地方でじわじわ増えているポツンと書店についてレポートする。
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2003年に2万を超えていた書店数は、2024年には1万417店となり1万を割り込む寸前(出版科学研究所調べ)。1日に1店舗のペースで閉店するほどに縮小傾向にある業界だが、そんな中、郊外を中心にポツンと店を構える、独特な業態の「書店」が存在する。
「正月に田舎に帰ったとき、お、本屋が出来たんだと嬉しくなりました。私が高校生の頃など、本屋はおろか、コンビニすらありませんでしたからね」
こう回想するのは、関東北部の農村出身の男性。都内の大学に進学するために上京、その後結婚を経て今は都下の戸建てに暮らす。妻や子どもをつれての久々の帰省時、新たにオープンしたという書店の看板を見てうれしくなった男性は思わず「本屋が出来たのか」と声を上げた。しかし不思議なのは、今なおコンビニすらできないほど僻地である故郷に、なぜ書店ができるのかということだ。その疑問は、新しい「書店」の横を車で通りすぎてすぐに解消したという。
「書店なんでしょうけど、売っている本が……18禁ばかりなんですよ。水着の女性のノボリが出ていたり、セクシー女優の○○さんが来店、などと大きく書いてありました」
「書店」の横を通り過ぎる際、妻から送られる視線が「汚いものを見るような目」だったと男性はうなだれる。だが、この人が特殊な体験をしたのではない。こういった「書店」が各地に続々オープンしているというのだ。アダルトビデオ制作会社の広報担当者が解説する。
「書店、ではありますが、扱っているものは成人向けの本やDVD、グッズです。あまり交通の便の良くないところやロードサイドにあるパターンがほとんどですが、車社会では近くに住宅がまばらな郊外や地方にあることが多く、むしろ好都合。有名なセクシー女優が新作のプロモーションのためにサイン会を開いて客が列をつくっても、近隣から苦情がくるようなこともない。地方のエロコミュニティ拠点として点在しています」(アダルトビデオ会社の広報担当者)
ネットとスマホだけでは満たされないものを書店で
ネットで調べると、確かに全国各地に「書店」と名の付く同種の店舗は存在する。しかも、交通の便がよい都市部ではなく、郊外や地方に多い傾向がある。筆者も関東や中国、九州・山口地方でこうした書店の看板をいくつか目撃したが、そこには地元の河川や山、名勝などから取られたと思われる、ありふれた名前の書店名と「この先何メートル」が書いてあり、どんな専門書店なのかという説明はいっさいない。こうなると、別の弊害も出てくる。九州北部在住の専業主婦の女性が言う。
