国内

導入検討の残業代ゼロ法案 欧米とは似て非なるただ働き制度

 安倍晋三政権が、サラリーマンを直撃するとんでもない法案を導入しようとしている。「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)制度」だ。

 これは一定収入以上のホワイトカラーを労働基準法の労働時間規制の対象から除外(エグゼンプション)し、管理職同様、何時間働いても会社は残業代を支払わなくていいようにするものだ。ひと言でいえば、「残業代ゼロ制度」である。

 首相が鳴り物入りで設置した産業競争力会議で、民間委員の三木谷浩史・楽天会長は「WEの欧米並み適用」を主張しているが、日本で検討されているのは裁量労働制と呼ばれるものだ。ホワイトカラーに勤務時間の裁量権を持たせるかわりに労働時間制限(週40時間まで)を撤廃し、何時間働いてもその社員の裁量とすることで会社は残業手当・割増賃金の支払い義務を負わないという、企業に都合のいい論理である。

 それは欧米の仕組みとはまるで違う。

 WE制度が生まれた米国には勤務時間の規制はなく、雇用主が労働者に週40時間以上の時間外労働をさせる場合には5割増しの賃金を支払うことを義務づけている。ただし、一定の収入と役職以上のホワイトカラーはその割り増しを除外されている。社員はそれでも困らない。米国企業に出向経験がある商社マンが語る。

「米国では原則として社員を契約で決めた以上の時間は働かせないし、社員も残業代をあてにしていない。エリートビジネスマンには土日も休まずに働くケースは少なくないが、それは成果主義が徹底されていて働くだけ収入が増える見込みがあるからです」

 しかも、サービス残業は絶対タブーだという。

「経営者は契約した労働時間でどれだけ仕事を処理できるかで社員の能力を判断し、そのプロジェクトに何人のマンパワーが必要かを計算する。それなのに、社員の1人が無給で残業して仕事を進めるとどうなるか。

 経営者にはその仕事が実際より少ない人数でできるという間違った認識が生まれる。それでは次に同じ仕事をするメンバーが正確な評価を得られなくなる。だからチームで仕事をする場合はサービス残業は厳禁なのです」(同前)

 逆に欧州諸国は失業を減らすためにワークシェアリングを重視し、労働時間に厳しい規制をかけて残業を「悪」とみなしている。ドイツには残業の割増賃金制度がなく、管理職は労働時間の規制が適用されないというだけだ。フランスやイギリスのWEに相当する制度も、管理職や専門職を労働時間規制の対象外とし、「残業代ゼロ」でただ働きさせるわけではない。

 いかにも欧米の制度を導入するかのようにいいながら、日本のWEは名前だけを利用した日本独自の「社員ただ働き制度」なのだ。

※週刊ポスト2013年4月12日号

関連キーワード

トピックス

「ラブ&ゲッチュ」とのキーワードを残したすがちゃん最高No.1(2024年9月撮影)
《チュウした?》柏木由紀と熱愛のすがちゃんが赤面、報道直後のライブで芸人から浴びせられた「記者よりエグい質問」
NEWSポストセブン
交際中の綾瀬はるかとジェシーがラスベガス旅行
《独占スクープ》綾瀬はるか&SixTONESジェシーがラスベガスへ4泊6日“里帰り”旅行  ジェシーにとって特別な場所
女性セブン
熱愛が発覚した柏木由紀とすがちゃん最高No. 1
「恥ずかしいからそれ言うのなし!」すがちゃん最高No.1、ライブにゲスト出演した元AKB48柏木由紀と見せていた白々しいやりとり
NEWSポストセブン
総裁になった場合、早期に解散総選挙を実施することも宣言した進次郎氏
小泉進次郎首相誕生なら“夫婦別居”か 滝川クリステルは愛犬との生活が最優先、首相公邸は事実上ペットNG
女性セブン
柏木由紀と交際中のすがちゃん最高No. 1
《柏木由紀の熱愛相手》「小学生から父親のナンパアシスト」すがちゃん最高No.1“チャラ男の壮絶すぎる半生”
NEWSポストセブン
伊藤健太郎が小栗旬の事務所へ移籍する
事務所退社の伊藤健太郎、小栗旬が社長を務める大手事務所で再出発へ 約2億円の違約金はコツコツ返済、大河ドラマにも出演で再評価の兆し
女性セブン
打ち上げにて、斜め向かいの席に座る、すがちゃんと柏木。言葉を交わす場面も多かった(2024年8月撮影)
《ツーショット》元AKB48・柏木由紀に人気チャラ男芸人との熱愛発覚、早朝4時の「ラブラブ帰宅シーン」
NEWSポストセブン
秋場所
秋場所の向正面に「溜席の着物美人」が! 盛夏に着る薄物で観戦の理由を本人明かす「異常な暑さで館内の熱気が凄い」「後半戦は単衣にしたい」
NEWSポストセブン
未成年誘拐の容疑で逮捕された小坂光容疑者(26)と、薬物中毒で亡くなったAさん
「春先から急に“グリ下”に......」「若い中高生らを集めて遊んでいた」未成年3人誘拐の小坂光容疑者のSNSに残されていた「亡くなった女子高生の青い舌」
NEWSポストセブン
藤澤五月(時事通信フォト)
ロコ・ソラーレに新たな筋肉ムキムキ選手、藤澤五月超えの“肉体”目指す人気選手 ボディビル系トレーニングを控える「暗黙の了解」
NEWSポストセブン
郵便局員が郵便物を配達せず捨てていたことが判明(時事通信フォト)
約3000通の郵便物を捨てた10代新入社員、背景に「昼休みを取れず残業が横行…」元職員が明かす“ブラック職場”疑惑 日本郵政は「労働力の確保に苦労している」
NEWSポストセブン
小柄女性と歩く森本レオ(81)
《今でも男女は異文化交流だと思う》森本レオ(81)が明かした世間を騒がせたスキャンダルの真相「女性に助けられた人生でした」
NEWSポストセブン