国内

立命館大学 Ritsと自称し関西No.2私大に迫る勢い見せている

 コラムニストのオバタカズユキ氏が監修を務める「大学図鑑!」(ダイヤモンド社)が、今年の発刊で15年目を迎えた。激変する大学環境を定点観測してきたオバタ氏に、この15年でもっとも変化した大学事情を聞いた。(取材・文=フリー・ライター神田憲行)

 * * *
--この15年でいちばん変化した大学はどこでしょうか。

オバタ:西なら立命館、東なら法政でしょう。今の大学生とその親世代の50歳前後の人たちとで、イメージがもっとも違う大学です。

 立命館はかつては学費が安くて「貧乏人左翼に人気がある大学」でした。それが大改革を1990年代から始め、1999年、「キャリアセンター」を設置します。いわば就職課の改革で今ではどこの大学でもありますが、実はキャリアセンターを日本で最初に設置したのは立命館なんです。脇目も振らず学生の就職支援を乗り出し、今では企業の人事課が「関東の大学のキャリアセンターより優秀」という評価しています。

 2000年代に入ると「ITとグローバル化」というキーワードを先取りした学部を次々に新設していきます。国際関係学部、政策科学部、情報理工学部などです。神田さんは関西の人ですよね? 自分の学生だったころ、立命館をなんと呼んでいましたか。

--「立命」とか「りっちゃん」とかですかね。

オバタ:今はRits(リッツ)というんですよ。これも彼らから自称しはじめたことで、ようは外国の人にも認識してもらえるように愛称もつけようとしているんですね。関西の主要四私大は「関関同立」といい、昔は同志社、関学、立命の順だったのが、今は立命がナンバー2に迫る勢いです。たださっき挙げた新設学部の学費はそれなりで、少なくとも学費の安い大学というわけにはいかなくなりました。

 法政もかつての左翼イメージから脱却しました。学生の自治の象徴だった学生会館なんて魔窟みたいだったんですが、それも取り壊され、オールナイトで学生がメチャクチャに騒ぐのが名物だった学祭も今は夜9時までに制限されています。学生気質も変化してきて、昔は「早稲田→明治→法政」という硬派大学ラインで第三志望の学生が多かったのですが、今はAO入試や推薦入試など一般試験以外で、第一志望で入る学生が増えてきました。だから昔みたいなコンプレックスを持っている学生は少ない。東京私学の就職では「MARCH(マーチ=明治、青山学院、立教、中央、法政の総称)」から上かより下かで2極化が進んでいるんですが、法政はマーチにぎりぎりしがみついている感じがするんですよ。

 郊外にある女子大も、かなり厳しい状況です。白百合、聖心、津田塾あたりはさすがの伝統校で存在感は今もあるし、共立や実践、大妻といった資格が取れる学科がある大学も堅調です。しかし校外にあってかつて「腰掛けOL」予備軍を大量に生産していた大学は、この不況で「腰掛けOL」が「派遣OL」に切り替わっていく中で、生存競争の厳しい状況に置かれています。

--学生気質そのものに変化はありますか。

オバタ:これも今の学生とその親世代でずいぶん違うのが、今の学生は授業によく出席するんですよ。親世代だと大学に行ってもサークル部屋でだらだら過ごして、麻雀しにいったり遊びに行くこともあったと思うんです。でも今の大学生はそもそもサークルに加入する率が少ない。1年生で7割くらい、でもゴールデンウィークや夏休み後にはその多くが辞めてしまいます。サークルに入らないから、大学で授業サボってもいくところがない。かつ今の大学教授は学生の管理をやかましく言われているので、出欠を取る授業が多い。ただ授業には出ているけれど、レポートの宿題はネットのコピペとかですから、勉強が出来るとは限らない。ただ出ているだけ。

--なぜサークルに入らないのでしょう。

オバタ:サークル棟を建て替えたときに部屋数がへって、サークルそのものの数が減ったことがひとつ。あと15年前なら学生の仕送りが月10万円がだいたいの平均だったんですが、今は10万円だとけっこう貰っている方になる。ないぶんだけバイトして、出欠とる授業出て、ということになるとサークルを楽しんでいる時間的余裕が無いんですね。自宅からの通学生も通学時間が延びているので、余裕の時間がありません。

 あと2003年に起きたスーパーフリー事件も大きい。あれでインカレのイベント系とかオールシーズンのスポーツ系サークルはみんな胡散臭くみられちゃった。インカレ系の遊びサークルは今はほとんど流行らないんじゃないかなあ。

 そういう学生の余裕がなくなり、大学側も「教育サービス化」してくると、トラブルが起きているのが学生と大学職員です。大学職員の方からは、学生からのクレームが非常に多いと聞きます。掲示板の文字が小さくて大事な連絡事項を見落としたとか、学生というより「消費者」意識が先にたっているんですね。

--その中で、あえて変わっていない大学ってあるんですか

オバタ:うーん、慶応は変わっていないかもしれません。SFCを作ってITと国際化の先鞭をつける大きな改革をしましたが、以降、そんなに変化がない。相変わらず三田会というOB会も健在ですし、アッパーミドルのエリート大学という雰囲気を維持しています。対照的なのが早稲田大学で、2007年度に第二文学部を解体したのが大きい。良くも悪くも早稲田カラーを代表していた学部で、それが無くなったことでかつてあった「ワイルドさ」とか「いろんな学生がいるジャングルっぽさ」が薄まり、普通のエリート大学になったと思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
日本テレビの杉野真実アナウンサー(本人のインスタグラムより)
【凄いリップサービス】森喜朗元総理が日テレ人気女子アナの結婚披露宴で大放言「ずいぶん政治家も紹介した」
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン