国内

防衛事務次官のPCハッキング事件 おわびメールを独占入手

 北朝鮮が「ミサイル発射も辞さず」の瀬戸際外交を続け、朝鮮半島を巡る緊張がいまだ止まぬなか、日米の防衛上の緊密な連携は不可欠といえる。しかしわが国の機密管理は、米国から不信感を抱かれるほどに、杜撰極まりないものとなっている。今度は、防衛省の事務方トップにスキャンダルが巻き起こっている。

 本誌は、防衛関係者を慄然とさせたあるメールを入手した。その重要性ゆえ、少し長くなるが全文を掲載したい。

<各位 昨日私のところから不審なメールを受け取られたことと存じます。これは、何者かに私のメールがハイジャックされたことが原因で、添付ファイルにウィルスが仕込まれております。

 まだ開封されていない方は、直ちに破棄してください。もし不幸にして開封されてしまった方は、恐縮ですがアンチウィルスプログラムでスキャンしてくださるようにお願いします。ご迷惑おかけして、大変申し訳ありませんでした。西正典>

 このメールの送信者である西正典氏は、4月1日付で防衛事務次官に就任した人物である。

 国会会期中の次官交代は異例といわれる。「金沢博範・前次官は非常に民主党色が濃い役人だといわれていた。一方、防衛政策局長だった西氏は、安倍総理の信頼が厚いとされている。北朝鮮の緊張が高まるなかでの抜擢人事だったという見方が強い」(防衛省関係者)という。防衛省内でも長く有能と評されてきた人物だ。

 そんな実力者のメールが、〈ハイジャックされた〉とは一体どういうことなのか。 実は、西氏のパソコンがウイルスに感染し、さらに何者かによって不正にアクセスされた疑いが持たれているのである。

 この話は新聞・テレビなどのマスコミでは全く報じられていないし、政府や防衛省もほとんど情報を出していない。しかし事態は非常に深刻である。

 奇しくも4月23日、防衛省情報本部に勤務する60代の女性事務官による情報漏洩疑惑が一斉に報じられた。持ち出し禁止の文書を持ち帰ろうとし、2007年頃には中国人留学生とも接触していたとの内容である。こちらの話題が盛んに報じられる一方で、もっと重要な国家機密を握る存在である西次官のハッキング騒動が黙殺されていたのである。

 ハッキング騒動が発生したのは3月29日のことだった。防衛政策局長だった西氏の昇進が明らかになった直後であり、就任2日前の出来事だ。

 西氏が私的に使用していたGメールのメールアドレスから、多数の関係者に向けて、ウイルスに感染したと見られる不審なメールが送られたのである。防衛省関係者がいう。

「私的なアドレスとはいえ、事務次官になろうかという重要ポストの人間が使用するのはあまりにもワキが甘い。この不審メールについては、誰かが西氏のGメールに不正にアクセスして送信したものなのか、それとも西氏のパソコンがウイルスに感染したことによって自動的に送信されたものなのか、はっきりわかっていない。

 しかしもしそれがウイルスによって行なわれたものだったとすれば、西氏のパソコン内部にある機密が流出したり、遠隔操作によって覗き見されてしまった可能性もある。当時の西氏は、次官交代に際して金沢前次官からの引き継ぎ事項を数多く抱えていた。もしそのデータの一部がハッキングされていたら大変なことだ」

 さらに問題なのは、被害が西氏のパソコンにとどまらないかもしれないことだ。

「西氏のアドレスから送られた不審メールの件名は“事務連絡”だったらしい。メールの送信先には、防衛省幹部や政府要人も含まれていた。西氏本人のアドレスからそんな件名のメールが送信されてきたら、何も考えずにメールを開いてしまってもおかしくないだろう。もしこのメールによって彼らのパソコンがウイルスに感染すれば、そこからさらなる機密情報がハッキングされてもおかしくない」(前出・防衛省関係者)

●取材・文/時任兼作と本誌取材班

※週刊ポスト2013年5月17日号

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン