ビジネス

ぽっちゃりファッション市場が急成長 美魔女ブームの反動か

 通常の3倍の広さの試着室、汗をかきやすい体質に配慮した低めの室温、かがまなくてよい高さにのみ商品を陳列――これは、「スマイルランド」の店舗に施された工夫の数々。通販大手のニッセンが手掛けるラージサイズ専門ブランドの実店舗だ。現在、東京・渋谷のパルコのほか、全国に5店舗を展開する。ここ数年、スマイルランドは、対前年比10%以上という売り上げを実現。いま、女性の“ぽっちゃり”市場が、活気づいている。

「これまでは、デザインよりサイズ重視でした。とにかく、入るものを選ぶしかなかった。でも最近は、サイズが豊富になって、デザインで選べるようになってきました。買い物が楽しくなりましたね」

 身長155センチ、体重62キロの、ややぽっちゃり、を自認する30代女性は、こう語る。前出のスマイルランドは、Lから10Lサイズを取りそろえるなど、サイズ展開が幅広い。店員にもぽっちゃり型をそろえ、客の体型に合う服選びを助ける。「体型を隠そうとするのではなく、体型に合ったものを着るほうが、きれいに見えるんです」と、店員は話す。

 今年3月には、国内初となる“ぽっちゃりさん向けおしゃれ応援マガジン”を謳った「la farfa(ラ・ファーファ)」が、ぶんか社より発売された。表紙を飾るのは、ぽっちゃりタレントとして人気の高い渡辺直美。発売から2週間で8万部突破という数字をたたき出した。

 他にも、ユニクロがインターネット限定で販売する特別サイズ(2XL~4 XL/男女向け)は、ネット売り上げの半数を占めるようになったという。百貨店なども、この市場への注力を進めている。伊勢丹新宿本店は、今年3月の全面改装時に、大きなサイズ売り場を一新し、拡大アップにつなげた。ぽっちゃり市場は洋服に限らない。ワコールは4月より、「ぽちゃカワブラ」の通販を始めている。

 とはいえ、ぽっちゃりした女性の数が、急激に増えているというわけではない。

 ここ30年の日本人女性のBMI(体格指数)の推移をみると、全体のトレンドとしては、「やせ」に向かっている。肥満に分類されるBMI25以上の割合は、20~30代ではほとんど変化はなく、40代では減少。一方、やせに分類されるBMI18.5未満の割合は、20~40代で上昇しているのだ。とりわけ40代の上昇率が高く、美魔女ブームなどの影響が垣間見られる(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。つまり、ぽっちゃり市場の拡大は、対象が増えたことによるものではなく、眠っていた潜在需要を掘り起こした面が強いと考えらえる。

 ぽっちゃり市場が好調な背景について、消費者行動に詳しいニッセイ基礎研究所の久我尚子氏は、おしゃれを楽しむ傾向の表れだと分析する。

「ここ数年、身の回りに気を遣う時間が増えているという調査結果が出ています(総務省「社会生活基本調査」)。つまり、どのような年代、どのような体型でも、おしゃれを楽しむようになってきているんですね。そうしたニーズを、アパレルメーカーなどが捉え始めたと考えられます」
 
 もう一点、とりわけ若い女性に、“反動”が見られるようになっていると指摘する。

「ダイエットは変わらず大きな需要としてあります。ですが、美魔女ブームのように、ストイックに美を求める行動が加熱するなかで、反動も出てきています。自分が美魔女を目指していなくとも、とくに下の世代の見ている人のなかに、そんなに頑張らないといけないのか、という疲れが出てきているんですね。

 こうした状況と呼応するように、テレビでは柳原可奈子さんなど、ぽっちゃりしたタレントさんが活躍するようになりました。ぽっちゃりのイメージがアップしたことで、無理にダイエットをするのではなく、自然体の体型を活かしたおしゃれをする方向に向かう方が増えているのかもしれません」

 折しも今月頭には、世界最大の売り上げを誇るアパレルブランドH&Mが、最新水着キャンペーンで、ぽっちゃり型のモデルを起用したことが話題となった。ぽっちゃりでおしゃれ、は、世界の流れでもある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン