夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、ご主人(54歳)が信用金庫勤務の奥様(55歳)。田舎ということもあり、広い敷地の一軒家住まいです。
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主人の趣味はマッチ棒でのお城作り。弘前城や熊本城など、何千本ものマッチ棒を組み合わせ、高さ30cmほどの城を完成させます。でも、模型では満足できなくなってきたようで、「庭に本物の城を作るぞ!」。これまで大工仕事なんか一度もやったことのない主人ですが、「大丈夫! 設計から施工まで、マッチ棒でシミュレーションしてるから。今回は姫路城をモチーフにするつもりだ」。
その週末、「まずは建設用資材を置くための物置を作る」と作業にかかった主人の手際を見て感心。土日の2日間で広さ4畳半ほどの小屋が完成です。
「あなたって、建築の才能があるのね」尊敬と信頼の念を込め、日曜の夜、風呂上がりの主人にお酌する私。その夜は久しぶりに主人の腕枕で眠りにつきました。篤姫になって大奥でかしずかれる夢も見ました。
でも、朝方、寝室のガラス戸を叩く風の音に目が覚めました。不吉な予感で庭に出ると、強風でペチャンコにつぶれた物置の残骸が! 姫になる私の夢もつぶれた瞬間でした。
※週刊ポスト2013年7月5日号