国内

足利事件・冤罪被害者の菅家氏 22年前のバッシング報道再録

 ある大手メディアのベテラン記者は、“足利事件”の冤罪被害者である菅家利和氏と会った際、「申し訳ありませんでした」と謝罪した。 駆け出し記者の頃、宇都宮支局で県警を担当し、事件の取材に関わったからだという。

「当時は冤罪だなんて考えなかった。でも、もしその可能性を追及していれば、菅家さんがあれほど長く苦しまなかったかもしれない。謝って済む問題じゃないけど、一言謝らずにはいられなかった」

 こんな記者もいるが、あくまで例外的存在だ。私もメディア界で長く禄を食んできたが、自らが取材に関わった事件の冤罪被害者に詫びたという話は初めて聞いた。

 それに、謝って済む問題ではないのも事実だろう。権力監視こそメディアの役割であり、検察や警察はその極北というべき組織なのに、大半のメディアが検察や警察の尻馬に乗り、半ば嬉々として被疑者をバッシングするのがお決まりの情景になっている現状は薄ら寒い。

 今から22年前の菅家氏の逮捕報道にも、その病理が凝縮されていた。

<「隠れ家」でロリコン趣味にひたる地味な男。(中略)“幼女の敵”は大胆にもすぐそばに潜んでいた。(中略)菅家容疑者は、絞り出すような声でPちゃん(記事中では実名)殺しを自供した。(中略)「容疑者に間違いない」と取調官は感じた>(1991年12月2日・読売朝刊より抜粋)

<ポルノビデオなど200本以上のビデオテープを持ち、(中略)今春まで勤めていた幼稚園の園児の間では「変なおじさん」のニックネーム><「いたずらするのが目的」と動機をいい、「騒がれては困るので殺した」などと自供したという>(同3日・朝日朝刊)

 溜息が出るような記事ばかりだが、この病理は今も昔も変わらない。

■文/青木理(ジャーナリスト)

※SAPIO2013年8月号

関連記事

トピックス

米倉涼子
《米倉涼子の自宅マンション前に異変》大手メディアが集結で一体何が…薬物疑惑報道後に更新が止まったファンクラブは継続中
火事が発生したのは今月15日(右:同社HPより)
《いつかこの子がドレスを着るまで生きたい》サウナ閉じ込め、夫婦は覆いかぶさるように…専門家が指摘する月額39万円サウナの“論外な構造”と推奨する自衛手段【赤坂サウナ2人死亡】
NEWSポストセブン
自らを「頂きおじさん」と名乗っていた小野洋平容疑者(右:時事通信フォト。今回の事件とは無関係)
《“一夫多妻男”が10代女性を『イヌ』と呼び監禁》「バールでドアをこじ開けたような跡が…」”頂きおじさん”小野洋平容疑者の「恐怖の部屋」、約100人を盗撮し5000万円売り上げ
NEWSポストセブン
ヴァージニア・ジュフリー氏と、アンドルー王子(時事通信フォト)
《“泡風呂で笑顔”の写真に「不気味」…》10代の女性らが搾取されたエプスタイン事件の「写真公開」、米メディアはどう報じたか 「犯罪の証拠ではない」と冷静な視点も
NEWSポストセブン
来季前半戦のフル参戦を確実にした川崎春花(Getty Images)
《明暗クッキリの女子ゴルフ》川崎春花ファイナルQT突破で“脱・トリプルボギー不倫”、小林夢果は成績残せず“不倫相手の妻”の主戦場へ
週刊ポスト
超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”だった高橋麻美香容疑者
《超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”の素顔》「白血病が再発して余命1か月」と60代男性から総額約4000万円を詐取か……高橋麻美香容疑者の悪質な“口説き文句”「客の子どもを中絶したい」
NEWSポストセブン
迷惑行為を行った、自称新入生のアビゲイル・ルッツ(Instagramより)
《注目を浴びて有料サイトに誘導》米ルイジアナ州立大スタジアムで起きた“半裸女”騒動…観客の「暴走」一部始終がSNSで拡散され物議に
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《異なる形の突起物を備えた光沢感あるグローブも…》10代少女らが被害に遭った「エプスタイン事件」公開された新たな写真が示唆する“加害の痕跡”
NEWSポストセブン
「みどりの『わ』交流のつどい」に出席された秋篠宮家の次女、佳子さま(2025年12月15日、撮影/JMPA)
佳子さま、“ヘビロテ”する6万9300円ワンピース 白いジャケットからリボンをのぞかせたフェミニンな装い
NEWSポストセブン
オフシーズンを迎えた大谷翔平(時事通信フォト)
《大谷翔平がチョビ髭で肩を組んで…》撮影されたのはキッズ向け施設もある「ショッピングモール」 因縁の“リゾート別荘”があるハワイ島になぜ滞在
NEWSポストセブン
愛子さまへのオンライン署名が大きな盛り上がりを見せている背景とは(時事通信フォト)
「愛子さまを天皇に!」4万9000人がオンライン署名、急激に支持が高まっている背景 ラオス訪問での振る舞いに人気沸騰、秋篠宮家への“複雑な国民感情”も関係か
週刊ポスト
群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン