トランプ大統領(左)は今年4月に訪中し習主席と会談する予定(写真/AFP=時事)
トランプ米大統領が「力こそ正義」と言わんばかりの動きを次々と見せている。各国が翻弄されるなか、中国の習近平・国家主席がほくそ笑んでいるのは間違いないようだ。次なる危機が起きるのは極東アジアである可能性が高まっている。【全3回の第1回】
トランプ大統領はベネズエラでの軍事作戦でマドゥロ大統領を拘束、米国に連行して裁判にかけると、世界一の埋蔵量を誇る石油利権を奪った。
グリーンランド(デンマーク自治領)をめぐっては米国の領有に反対する英、仏、独など欧州諸国に追加関税を持ち出して圧力をかけ、米軍による占領についても「ノーコメント」と可能性を否定しなかった。
武力による威嚇や武力行使で他国の領土や政治的独立を奪う「力による現状変更」は国連憲章で禁じられているが、トランプ氏は歯牙にも掛けない様子だ。
その状況が中国にとって好都合である理由を自民党安全保障調査会長の小野寺五典・元防衛相がXで明快に指摘している。
〈仮に中国が台湾に対して力による現状変更を試みた場合、米国が強く対抗してもトランプ政権では国際世論をまとめるのは難しく。ますます東アジアが不安定化する懸念があります〉(1月4日)
米国はベネズエラという他国に武力攻撃を行なったが、中国は台湾を「中国領」と主張してきた。たとえ中国が武力による威嚇で“中台統一”に動いても、他国を攻撃した米国は文句を言える立場ではなくなったという見方だ。
トランプ大統領自身、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで「彼(習氏)は台湾を中国の一部と見なしており、何をするかは彼次第だ」と語っている。
一部の大国によって世界の“棲み分け”が進められつつあるとも言えよう。事実、ロシアのラブロフ外相は2014年に軍事介入して実施したクリミア併合をめぐり「クリミアは米国にとってのグリーンランドと同じほど重要」という言い方で正当化。同じ理屈を習主席も展開できるのである。
トランプ大統領は今年4月に訪中し、習主席との会談で中国がベネズエラに持っていた石油などの権益について協議すると見られている。
外交専門家の間では、米中首脳会談で、「米国は中国が台湾領有を進めても手を出さない」という密約が交わされるのではないかという見方が強まっている。
何より、他ならぬ台湾からも、そうした懸念があがっているのだ。
