ライフ

庶民の性の歴史的文献「性生活報告」誌はかくして誕生した

 創刊32年を迎える「性生活報告」(発売元:サン出版)は現在も部数1万部以上を誇る熟年投稿雑誌である。投稿作品に一切手を加えないという編集方針は、現在も貫かれている。ノンフィクションライターの本橋信宏氏が綴る。

 * * *
 庶民の貴重な性の歴史的文献とも言える「性生活報告」誌は、どのように誕生したのだろう。サン出版を訪れた私を出迎えたのは、櫻木徹郎編集顧問、同誌に長く携わってきた編集スタッフの安西弘吉氏、穴見英士現編集長である。櫻木氏は、ゲイ雑誌「さぶ」や女性向け耽美同性愛誌「JUNE」などの創刊にかかわった名物編集長である。
 
 肉食系高齢者の性の饗宴を毎号送り出してきた3人のベテラン編集者が集うと、意外なことに大学教授会のような知的インテリジェンスさえ漂わせる。
 
「『性生活報告』は新田啓造編集長の個人的情念で起ち上げた雑誌です」と櫻木氏(残念ながら新田氏は2年前に病に倒れ、還らぬ人となった)。
 
「新田さんは幅広いキャパがあり、なんでもすくい上げる能力がありました。投稿してくる人を大事にする編集者でした」(安西氏)
 
「目力がある。新宿で飲んでいて、じっと見つめると女がついてくるという伝説があったくらいですから(笑)。やさしい上に女を惹きつける牡の魅力があったんじゃないでしょうか」(穴見氏)
 
 庶民の性報告書は肉食系編集長が創刊させたものだった。
 
 同誌の投稿は大きく分けて4期に分けられるという。第1期は戦中から戦後にかけての性体験。戦地におもむいた夫を待つ人妻を寝取ってしまった話、防空壕で他人妻と交わってしまう話等が投稿された。第2期は、東京オリンピックを契機に日本中が高揚した1960年代の高度経済成長期の性体験。集団就職した少年が下宿先のおばさんに童貞を奪われた話、人妻を寝取ったそば屋の出前の話が目につく。
 
 第3期はバブル期から平成にかけて、高齢化でお年寄りが増え、彼らの現在進行形の性体験が集まった。敬老会でナンパして乱淫した話、団塊世代がリタイヤして中学高校の同窓会が増え、幼なじみと一線を超えてしまう話。そして世紀をまたいだ第4期は、手書きの投稿に混じりメールで送る新高齢者の割合が増えた。バイアグラの力で若い世代に負けない年配者の性体験が目立つようになる。
 
「部数は1万部です。32年間のなかで一番部数が出ていたのが1990年前後で、3万部出ていました」(穴見編集長)
 
 出版不況で相次ぎエロ本が休刊に追い込まれるいま、この部数は大健闘だろう。
 
「性生活報告」に集まる手記に共通するのは、反省など皆無、快楽に忠実、性欲絶対肯定主義だ。
 
 彼らの日常生活は善良な常識人であるが、こと女との肉交になると様変わりする。落差があるほど性のエネルギーは増大するのだ。
 
「エロは生きる源になるんです」(櫻木氏)
 
 男たちの性体験報告は紅染月の今夜も、新たに生まれる。

※週刊ポスト2013年8月30日号

関連キーワード

トピックス

今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
国仲涼子が語る“46歳の現在地”とは
【朝ドラ『ちゅらさん』から24年】国仲涼子が語る“46歳の現在地”「しわだって、それは増えます」 肩肘張らない考え方ができる転機になった子育てと出会い
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン