国内

23歳ナマコ密漁女「溺れた仲間を見捨てるのは仁義なさすぎ」

 8月26日、復興途上にある岩手県普代村で、釜石海上保安部がアワビの密漁団を現行犯逮捕した。いま、東日本大震災をきっかけに、暴力団をバックにした“密漁”ビジネスが活発化。巨大なシノギに成長しつつあるという。潜入取材に定評のあるライター・鈴木智彦氏が解説する。

 * * *
 密漁界において、いま「革命」と呼ばれるほど人気なのが、中華料理の高級食材・ナマコである。

 起爆剤は2008年の北京五輪だった。以降、中国大陸で急激に需要が拡大し、高騰。北海道の密漁者はいっせいにナマコ漁へと転換した。赤、青、黒の3種類があって、密漁されるのは主に黒ナマコである。これを乾燥させるとキロ12万円という高額で売れる。

 現在、生の黒ナマコの裏相場はキロ4500円程度といい、正規品の流通価格とほぼ変わらない。一般的に密漁品は正規品より安価だが、ナマコだけは例外なのだ。簡単に大量に獲れ、かつ高額な黒ナマコ……以降、密漁の世界は急激にシステム化され、分業が進んだ。

 当然ながら、ここでも密漁を牛耳っているのは暴力団で、彼らは巧妙な集金システムを作り上げた。

「獲ったナマコは即日、買い付け専門のネタ屋という業者に引き渡す。高速道路沿いの副道を山に向かって走り、表からは見えないトンネルの中で受け渡しをする。計量の際は水目を引く。ナマコはほとんど水分で、翌日になると目方が減るので、計った重さの8割5分に裏相場の時価、つまり今なら4500円を掛けた金額をキャッシュで支払うわけだ。

 暴力団はネタ屋を通じて、密漁団からキロ1000円のカスリ(みかじめ料)を徴収する。ナマコは毎日大量に獲れる。函館には10チームほどの密漁団がいて、1チームあたり1トンは揚がるから合計10トン。いい金になる」(函館近郊の暴力団関係者)

 雨で海水が濁らない限り、毎日、約1000万円の日銭が暴力団に転がり込む。おまけに漁業法に違反しても3年以下の懲役、または200万円以下の罰金にしかならない。最高で無期懲役となる覚せい剤事犯と比較すると、極めて安全で儲かるシノギといえる。大きな利権のため、函館ではナマコがらみで、暴力団による拉致事件が起きたり、行方不明者も出ている。

 巨額の金が動くため、ナマコの密漁ではこれまでの密漁の常識が通用しない。

「これまでの密漁なら、力仕事なのでチームは全員男だったが、ナマコには女がいる。取り締まりが厳しいから海保や警察の裏を掻いて、ブツ受け渡しの現場に女を行かせるんだ。現実に検問にあっても女だとフリーパスだし、尾行も付かない。それに女のほうが度胸が据わってる」(同前)

 取材最終日、市内の老舗料亭でナマコの密漁を行なっているという女性に取材できた。正真正銘、本物の「黒いあまちゃん」は自らの黒い仕事と正反対の美白で、真っ白なブラウスを着ていた。かわいらしい顔だ。23歳だが、高校生といっても通用するだろう。

「(密漁の)仕事は夜やるんで、昼間はずっと寝てます。だからほとんど日焼けしないです。ナマコは浅い海域にいるし、手で拾い上げるだけで獲れる。でもその分、腕のないチームが乱立して迷惑ですね。いきなり仕事に出て潜水病になったり、耳を潰したり。自業自得ですよね。おぼれた仲間を見捨てて逃げたり、海保に電話して助けを求めたりするのもいて、仁義がなさすぎって思う」

 ドラマの主人公とは正反対の、任狭精神あふれる毒舌にぶったまげた。

※週刊ポスト2013年9月20・27日号

関連記事

トピックス

緊急入院していた木村文乃(時事通信フォト)
《女優・木村文乃(37)が緊急入院していた》フジ初主演ドラマ撮影中にイベント急きょ欠席 所属事務所は「入院は事実です」
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
《豊田市19歳女性刺殺》「家族に紹介するほど自慢の彼女だったのに…」安藤陸人容疑者の祖母が30分間悲しみの激白「バイト先のスーパーで千愛礼さんと一緒だった」
NEWSポストセブン
女子児童の下着を撮影した動画をSNSで共有したとして逮捕された小瀬村史也容疑者
「『アニメなんか観てたら犯罪者になるぞ』と笑って酷い揶揄を…」“教師盗撮グループ”の小瀬村史也容疑者の“意外な素顔”「“ザ”がつく陽キャラでサッカー少年」【エリート男子校同級生証言】
NEWSポストセブン
2023年7月から『スシロー』のCMに出演していた笑福亭鶴瓶
《スシローCMから消えた笑福亭鶴瓶》「広告契約は6月末で満了」中居正広氏の「BBQパーティー」余波で受けた“屈辱の広告写真削除”から5カ月、激怒の契約更新拒否
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長》東洋大卒記者が卒業証明書を取ってみると…「ものの30分で受け取れた」「代理人でも申請可能」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
《フジテレビに蔓延するオンカジ問題》「死ぬ、というかもう死んでる」1億円以上をベットした敏腕プロデューサー逮捕で関係する局員らが戦々恐々 「SNS全削除」の社員も
NEWSポストセブン
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
《新歓では「ほうれん草ゲーム」にノリノリ》悠仁さま“サークル掛け持ち”のキャンパスライフ サークル側は「悠仁さま抜きのLINEグループ」などで配慮
週刊ポスト
70歳の誕生日を迎えた明石家さんま
《一時は「声が出てない」「聞き取れない」》明石家さんま、70歳の誕生日に3時間特番が放送 “限界説”はどこへ?今なお求められる背景
NEWSポストセブン
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン