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廃校後の校舎 7割がホテルや病院などに生まれ変わっている

 残暑は続いているものの季節は確実に秋めいてきた。連休の多い行楽シーズンの到来である。今年はアベノミクス効果もあり、夏休みの旅行消費額は2000年以降過去最高を記録(JTB調べ)。これから始まるシルバーウイークでも国内旅行は賑わいを見せそうだ。そんななか、宿泊先や体験施設の一つとして注目されているのが“廃校”である。

 廃校とは少子化による生徒数の減少、市町村合併に伴う統廃合などにより廃止となった学校のこと。平成23年度は全国で474校が廃校になった。文部科学省が調査を開始した平成4年度から平成23年度までの約20年間に、実に6834校が廃校となっている。こうした状況を背景に近年、文部科学省が「~未来につなごう~『みんなの廃校』プロジェクト」を立ち上げるなど、廃校の再利用が進められてきた。学校としての役目を終えた建物の約7割がいま、宿泊施設やレストラン、美術館や病院、教育施設など、地域の新たな拠点として生まれ変わっている。

「ここで1泊2日で同窓会をするんです」そう語るのは都内の30代女性だ。「学校の雰囲気がいいんですよ。童心に返れますから」。

 彼女が利用するというのが廃校を活用した体験交流施設・栃木県の「星ふる学校 くまの木」で、今年で12年目を迎える。NPO法人「塩谷町旧熊ノ木小学校管理組合」が管理・運営を行っており、年間6000人が利用する。宿泊は大人一人3000円から。校庭には天体ドームがあり、天体望遠鏡で星空観測ができるほか、「そば打ち」などの体験プログラムも充実している。高校・大学の天体部の合宿先として、また、家族連れや、上記女性のように大人のイベントにも人気だという。

 廃校を利用した宿泊施設には、比較的リーズナブルな値段で泊まれるという魅力がある。だが、それだけではない。例えば群馬県の「泊まれる学校 さる小」は夏季期間、プールを解放している。施設によって利用範囲は異なるが、運動場や音楽室が利用できるなど、学校施設ならでは利点があるのだ。

 とはいえ、リニューアルした廃校のすべてが順調というわけではないようだ。いまだ放置されたままの廃校もある。廃校利用の運営主体には、地方自治体やNPO法人、民間企業が就くなど、様々のケースがあるが、そもそも、過疎や人口減少で廃校になっており、その地域に人を呼び込むのは容易なことではない。

 廃校活用を支援する「まちむら交流きこう」の広報部・畠山徹さんは運営の難しさをこう語る。

「地域で運営しているだけではなかなか集客は難しいんです。ですが、民間企業に入ってもらって利益を出せばいいかというと、それだけでもない。雇用が増えることも大事ですが、一番は、その地域が元気になることだと思うんですね。

 廃校利用の最大の目的は、地域の活性化です。地域のシンボルであり、拠り所である学校を軸に、地域を再建することです。そのために、どういう利用法、運営法があるのかを、地域の置かれた状況ごとに考えていく必要があります。上手くいっている宿泊施設はありますが、廃校を宿泊施設にするには安全確保が必要でハードルが高いのです。経済的には難しいかもしれませんが、最近増えているアートイベントなどは、観光客も呼び、地域の人も楽しめるという点で、良い活用法かもしれませんね」

 例えば、廃校を利用した新潟県十日町市の「絵本と木の実の美術館」は、3年に1度開催される「大地の芸術祭」の舞台にもなり、リピーターを増やしている。

 続けて畠山さんは今後の課題を指摘する。

「これまで廃校になった校舎の多くは、木造校舎でした。今後はRC(鉄筋コンクリート)構造の大きな校舎が廃校になっていきます。これをどう活用していくのか。壊すにしろリニューアルするにしろ、木造校舎に比べて扱いが難しくなる。地域全体で考えていかねばなりません」

 安さとノスタルジーだけでは、今後ますます増える廃校を再生させるのに十分ではない。さらなる知恵と工夫が問われそうだ。

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