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エクストリーム出社「始めたら満員電車でも穏やかな気分に」

エクストリーム出社中のしーなねこ(椎名)さん

「エクストリーム出社」というスポーツをご存じだろうか? 家から会社への移動を利用して、観光、海水浴、登山など休日でなければチャレンジできないと思い込んでいることに取り組み、定刻までに出社するスポーツなのだという。現在、会社員のあいだで密かに流行のきざしをみせているこの“新競技”について、普及に取り組む日本エクストリーム出社協会プロデューサーで出社ニストのしーなねこ(@shiinaneko)さんに聞いてみた。

* * *
 僕自身は夜型です。朝型とはほど遠いです。エクストリーム出社のために朝4時と早起きするには、目覚まし時計を二つかけて寝ます。それなしでは起きられません。エクストリーム出社ではキャンプや山登りもしていますが、アウトドア派でもありません。いつかやってみたいとテントを買っていただけで、実際には一度も使ったことがありませんでした。

 8月に僕と協会代表の天谷さんでエクストリーム出社を始めました。温泉に入ったり山登りしたことをツイッターで報告しつつ、それをトゥギャッターでまとめるということを何回か繰り返したら、まず友人が面白がり、出社のまとめを読んだ人が加わり、という形でどんどん実践する人が増えていきました。

 ハッシュタグでつなげば、バラバラに行われているエクストリーム出社の様子を楽しむことができます。その機能を利用して、夏休みが終わった後の気分が残ってだるくなりがちな9月の第一週を面白くしようと、全国一斉エクストリーム出社大会の開催を呼び掛けました。予想以上に多くの人が全国から参加してくれました。

 エクストリーム出社をする人のことを「出社ニスト」と呼んでいるのですが、9月2日から6日までの大会期間の間に、とても多くの出社ニストの活躍が報告されました。

 参加している人には家族がいる人も多いです。お子さんと一緒に公園へ行き、大きな絵を描いた出社ニストもいます。バリエーションも様々で、激流下りや早朝合コンなどいろいろです。女性は身近な範囲で深く探るテーマを選ぶ傾向が強いかもしれません。吉田松陰にちなんだ史跡巡りをした人や、三越のライオンにまたがりにいった人もいます。男性は、やたらと長い距離を歩くなど挑戦的なものが多い。

 大会では、知らない人どうしがハッシュタグで確認したツイートを見て鉢合わせするということも起きました。横浜中華街へ朝粥を食べに行ってツイートしたら、自分が食べているお粥と同じ食器のツイートを同時刻にしている人がいて、もしやと話しかけたら出社ニスト同士だった。

 他にも、山手線を自転車で一周してから出社しようと考えた人が同じ日に3人いて、途中で会ってツイートしているんです。エクストリーム出社というハッシュタグで確認して、出社ニストどうしが知り合う。そういう偶然に出会えるのも、朝から楽しいですよね。今までの朝では考えられなかった出来事です。

 僕自身は、普段から思いついたことをわりとメモしているのですが、その中から一つずつ、エクストリーム出社で実践しています。やりたいな、と思いついても、なかなかできないことだらけなんです。その中から、全国大会のスタートに合わせてミニキャンプファイヤーを選びました。

 キャンプ場に着いてから「これで火がつかなかったらごめん」と薪とチャッカマンの画像をツイートしたんです。すると、いっせいに突っ込まれました。絶対に無理だと。簡単に火はつかないものなんですね。結局、あとで合流した人が僕のツイートをみて足りないものを持ってきてくれて、無事にキャンプファイヤーは盛り上がりました。

「出社する先がないから参加できない」とツイッターで言われたこともあります。あくまでも出社することがルールなので、学生さんは社会人になってから参加してください。

 朝4時に起きたりすると体に負担がかかるんじゃないかという人もいます。でも、エクストリーム出社を始めてから、ずっと続いていた背中の痛みが消えましたね。会社の健康診断で痛みを訴えたら、胆石じゃないかと言われてエコーを撮ったりしたんですけど異常がみつからなくて、原因不明だったんですよ。仕事も、午前中から密度が高いものになって、朝一番の会議でもしっかり頭が回るようになりました。いいことだらけです。

 これまでは、混んでいる電車に乗ってイライラした人から舌打ちされると、こちらもムカっとしていました。でも、エクストリーム出社すると余裕があるのでムカつかないですね。穏やかな気持ちのままいられます。朝の10分は夜の30分や1時間に匹敵する密度があると聞いたことがあります。だから、早朝からアクティブに活動するエクストリーム出社はすごく得した気分になるんですよ。

 これからの季節は、紅葉狩りなどできそうですね。真夏だと、日の出が5時くらいと早いので、始発で出て登山をしてもご来光が拝めなかったのですが、冬にかけてならちょうどいい時間になりそうですね。いつかはヘリコプターで出社して、縄梯子で屋上に下りてきて出勤するというのもやってみたい。帝国ホテルに泊まってリムジンで出社とか、アンバランスなことをしたいですね。リムジンの貸し切りは2時間3万円ぐらいらしいですよ。

●しーなねこ 日本エクストリーム出社協会プロデューサー、出社ニスト。本名は椎名隆彦。1979年生まれ。地図やルート検索、観光情報サービスを提供するMapFanで企画業務にたずさわる会社員。新卒からずっとナビ開発などに携わる技術職だったが、1年前から現職に。ゲームのプログラムも組むが、「リアル桃鉄」など日常をゲーム化するのがライフワーク。独特の虚脱感を共有して面白がる「へもいっ子クラブ」代表でもある。9月19日には新宿のLivewireビリビリ酒場で全国一斉エクストリーム出社大会の表彰式を開催。

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