ビジネス

一人鍋対応つゆ 若者から熟年世代まで人気で売り切れ店続出

「1人前」「1人でも家族でも!」とパッケージにある鍋つゆの素

 豆乳、トマト、カレーにキムチと家庭での鍋料理も寄せ鍋だけでなく、多種多様になった。様々な味を楽しめるようになったのは、市販の鍋つゆの素が進化して普及した影響が大きい。そして今は、一人鍋に対応した鍋つゆの素の人気が高まっている。首都圏のスーパーマーケット生鮮売り場担当者がいう。

「これまでの鍋つゆの素も手間がかからず美味しいと好評だったのですが、量が多いという声もありました。ところが去年、固形の素1個で1人前になる、水と一緒に鍋に入れるだけの商品が発売されると、あっという間に売り切れました。これまで鍋つゆの素をあまり利用しなかった一人暮らしや年配のお客さんが手に取っています。今年も同じタイプの商品が人気で、CMが流れている新製品を並べるとすぐ売り切れる状態です」

 従来の鍋つゆの素といえば、鍋にあけてそのまま使えるストレートタイプのパウチか、濃縮のビンやペットボトル入りだった。簡単に本格的な味を家庭で再現できると人気を集めたが、パウチは3~4人前以上の液体が入っているのがふつうで、いったん封を切ると使いきらねばならない。また、ボトルは使用量が調整でき保存もできるが、重くて持ち運びしづらいと敬遠されることも少なくなかった。

 ところが、昨年8月に発売された「鍋キューブ」(味の素)は、鍋つゆを凝縮してキューブ状に固めた製品で従来品よりも重量が軽い。パウチの中には8~10個の固形キューブが入っていて、封を切っても中身を使いきる必要がなく保存できる。「キューブ1個が1人前」とパッケージにプリントされているように、一人鍋にも対応できることや簡便さと保存しやすさが評判を呼んで、初年度の売上は20億円を超えた。

 鍋キューブにつづき今年は、「一人鍋対応」をうたった鍋つゆの素の新製品が続々と登場している。1人分ずつポーション容器に入った「プチッと鍋」(エバラ食品工業)、フタがついたパウチで分量を調整できる「〆まで美味しい」(ミツカン)、フリーズドライ製法の固形鍋つゆの素「お鍋にポンパ」(ヤマサ)など、いずれも「1人前から作れる」「1個1人前」とパッケージに印刷され、一人鍋対応が可能だと強く打ち出している。

「一人前でもいろんな味を楽しめるのが、人気の理由でしょう」と料理研究家の吉田三和子さんは言う。

「野菜がたくさん採れて残り物でも作れるから健康的かつ経済的と鍋料理が人気を集め、一人暮らしでも鍋料理をする人が増えました。一人前だと野菜とお肉で寄せ鍋をつくる以外のバリエーションが出づらいからと、飽きてしまって作らなくなった人も少なくないようです。でも、鍋つゆの素を使えば変化をつけやすいですね」

 味に変化がつけられても、一人鍋はつい多めに作って食べ過ぎてしまうのも悩みどころ。ヘルシーなはずが、かえって体重を増やしてしまうこともある。

「鍋の大きさを適切なものにすれば問題は解決できます。必ずしも土鍋にこだわることはありません。かといって、ラーメン鍋のようなものでつくるのも味気ない。電子レンジで調理するルクエにも高さがあるものがありますから、材料と鍋つゆの素を使えば鍋料理に応用できますね。一人前に対応した鍋つゆの素の種類も増えていますから、これまで以上に美味しく楽しい鍋料理を手軽に楽しめます」(前出・吉田さん)

 総務省の平成22年国勢調査によれば、世帯全体の32.38%が単独世帯(一人暮らし)、夫婦のみが19.76%となり、ストレートタイプの鍋つゆの素でよくみかける「3~4人前」の大きな鍋を囲むことのできる家は多数派ではなくなった。日本社会の変化に合わせ、鍋つゆの素が一人鍋から対応するのは当たり前のことになったようだ。

関連記事

トピックス

“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン