芸能

草刈正雄 落ち込むため「自分の出演した作品は一切見ない」

 資生堂の専属モデルとしてデビューし、俳優に転向した草刈正雄は端正な容姿を生かした正統派二枚目だけでなく、コメディや汚れ役など幅広く演じる役者として知られている。しかし、いまだに自分の芝居にコンプレックスを感じるという草刈が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が解説する。

 * * *
 今でこそモデル出身の俳優は数多いが、草刈正雄はその先駆的な存在だった。1970年代初頭、資生堂の男性用化粧品「MG5」のテレビCMで端正な容姿が人気を博した後、草刈は1974年に篠田正浩監督の映画『卑弥呼』で岩下志麻の相手役に抜擢されて本格的に俳優としての道をスタートしている。

「モデルの仕事は僕には合ってないと思いました。よく動けなくてカメラマンに叱られていたんです。そんな時にMG5のコマーシャルが決まりまして、ここで芝居がかったことを要求されたところ、これならできると目覚めたんです。自分で考えられるというのが面白かった。

 ただ、『卑弥呼』では、まったく監督に動かされるままやっていました。頭がガチガチで。アテレコの時は台詞がなかなか上手く言えず、よく怒られました。

 僕は俳優としての基礎的なことをしてこなかった。それが今でもコンプレックスになっています。きっちりとした芝居のバックグラウンドがない。そのために、この歳になってもいろいろと落ち込んでしまいます。

 舞台をやるようになってから声を出せるようになったんですが、その前までは自分でも何を言っているか分からないくらいボソボソと台詞を言っている映画が多かった気がします。本当に自信がなかったんですよ。

 自分の出演した作品は一切見ません。見ると、落ち込む。そうなると前に進めなくなります。反省ばかりでどんどん後ろ向きになってしまうので」(草刈)

※草刈正雄は11月28日より、ミュージカル『クリスマス・キャロル』に出演。東京・シアター1010、神戸・新神戸オリエンタル劇場など全国で公演予定。

文■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか。

※週刊ポスト2013年11月1日号

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン