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渡部恒三氏「いちばんのご褒美の味は真っ黒けの卵かけご飯」

 母はどんな時も無償の愛で包んでくれた。その偉大さを知ったのはいつのことだったか。慈母の記憶はいつも、懐かしい温もりとともに甦る。ここでは、元衆院副議長で民主党元最高顧問の渡部恒三氏(81)が母・キイさんとの思い出を振り返る。

 * * *
 僕は福島県南会津郡の農家に生まれ、6人兄弟の末っ子でした。母親は、裁縫も上手いし、お琴や三味線も弾けるし、歌もうまかった。近所の娘さんたちが、よく習いに来ていましたよ。

 中学1年生のときに父と祖母が亡くなってからは、母親が女手ひとつで私たちを育ててくれた。

 母親は僕が子供の頃から、「恒三、人様のお役に立つ人間になれ」「人様に迷惑をかけてはならない、迷惑をかけられる人間になれ」と毎日いっていました。この言葉のおかげで、僕は政治家になった。自分が生まれ育った村をもっと豊かにしたい、村のためになりたいと思ったからね。

 忘れられないのは、母の作る卵かけご飯だな。

 これは僕にとっては特別のごちそうなんだ。家は決して貧しくはなかったが、裕福でもなかった。庭の草むしりをしたときや、掃除をしたときなどにご褒美として食卓に出してくれる卵かけご飯がいちばんのごちそうだった。

 当時は、3膳のご飯を食べるのにも、卵は1個。だから、溶いた卵が真っ黒になるまで醤油をかけて、3膳分のご飯を食べる。腹一杯ご飯を食べることが最高の贅沢だった。

 僕はいまでも毎晩、熱いおかゆに生卵をかけて食べているよ。でも、今は、卵にあまり醤油をかけなくなったな。卵をもうひとつ食べたいと思ったら食べられるようになったからかな。生卵の分量を気にしないなんて、僕はいま大変贅沢な暮らしをしているなぁ(笑い)。

 僕が会津中学に合格した日の夕飯も、もちろん卵かけご飯。当時の会津中学は、東大のような存在で、合格できたのは僕の一番の親孝行です。母親も、それはとてもとても喜んでくれて、卵かけご飯を出してくれたんだ。

 母親は、3年前の9月に106歳で亡くなったけど、母親の面倒は全部、妻に任せっきりでした。もっと親孝行をしてあげられればよかったなぁ。

■渡部恒三(わたなべ・こうぞう):福島県生まれ。元民主党最高顧問。2012年に政界引退。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

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