国際情報

韓国系米国人による従軍慰安婦像設置運動で日本の「初勝利」

 韓国系アメリカ人によって全米各地で展開されてきた慰安婦碑設置運動に日系アメリカ人が正面から反対し、カリフォルニア州のブエナパーク市議会は碑の設置を却下した。いわゆる「慰安婦問題」の根底にある一部の悪意ある反日運動と、それに影響された国際的な誤解が少しずつとけてきているのだ。この新しい動きについて、ジャーナリストの高濱賛氏がリポートする。

 * * *
 今アメリカで在米韓国人による「従軍慰安婦」碑(像)設置運動が広がりを見せている。ニューヨーク州ナッソー郡、ニュージャージー州パリセイズ・パーク市(人口1万7000人)に端を発した慰安婦碑設置運動は今年に入ってカリフォルニア州に転移。7月にはロスアンゼルス近郊のグレンデール市(人口19万人)で、ソウル日本大使館前に建つ少女像のレプリカが設置された。

 しかし、そこへ新たな動きが出てきた。その後ブエナパーク市(人口8万人)議会にも設置案が上程されたものの、7月には公聴会が開かれたうえで、賛成1、反対3、態度留保1で結論は持ち越された。そして8月末には態度を留保していた市議が明確に反対を表明。市長は現会期中にこの議案を取り上げないと宣言。2回目の公聴会が開かれる予定もなく、事実上の廃案となった。日本にとって「初勝利」だ。

 そもそも、韓国から9600kmも離れたアメリカで米国籍や永住権を持つ韓国系アメリカ人が「従軍慰安婦」像設置運動を繰り広げている理由は「国際的にも抜群な発信力を持つアメリカで問題を起こせば、世界で日本を貶められる」(韓国系活動団体の関係者)からだ。

 日本の総理大臣は「アジア女性基金」からの補償金を受け取った元慰安婦一人ひとりに謝罪の手紙を書いたが、韓国側はこの補償と謝罪を受けないよう元慰安婦たちに圧力をかけたうえで、日本は謝罪も補償もしないと声高に叫んでいる。

 ただし、謝った謝っていないといった「各論」では日本側も反論出来ても、「総論」では何も知らないアメリカ一般大衆に反論するのはなかなか難しい。日本とは異なり、アメリカの地方都市の市議会議員は大体5~6人。中には元大学教授や博士号を持った識者もいるが、大抵は土建屋とか仕事斡旋業出身者で、外交問題などには疎遠な人たちだ。

 さらに小差で選ばれるから選挙民、とくに組織からの陳情に弱い。韓国系組織は票とカネを使って市議会議員を取り込み、パリセイズ・パーク、グレンデールで“勝った”のだ。

●高濱賛(たかはま たとう)1941年東京生まれ。米カリフォルニア大学バークリー校卒。読売新聞社でワシントン特派員、調査研究本部主任研究員(日米関係、安全保障)などを歴任。1999年より米・パシフィック・リサーチ・インスティチュート所長。国際政治関連を中心に執筆活動を行っている。

※SAPIO2013年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン