国内

ホスト殺人事件 汚水槽から7ミリの証拠をとった刑事の執念

 死体がなければ殺人事件は立証できない。普通ならばそうだが、汚水槽に残ったわずか直径4.1ミリ、長さ7ミリのインプラントを発見し、犯人を逮捕した殺人事件の裁判が始まった。西東京のカリスマ・ホストを殺害し、遺体を溶かした事件の裁判を傍聴した作家の山藤章一郎氏が、凶悪事件の犯人逮捕へ至る道のりを報告する。

 * * *
〈検察官起訴状による事件概要〉

「3年前の平成22年11月末、20代、30代の従業員3人が八王子のホストクラブ〈BALIKAN〉の経営者・土田正道を共謀して殺害した。土田はその日、丸一日、連絡がつかなくなったら警察に通報するよう知人に伝えていた。実行犯は阿部卓也、従業員ホスト、27歳。土田の頭を銃撃した。以後、阿部は友人にも頼み、収納ボックスの死体を自分のアパートに、ついで実家に運搬した。

 その後、死体を「強アルカリ性の薬品を混ぜて、ずんどう鍋で煮沸、溶解させ、浴室の排水管に遺棄し、溶け残った骨を、あきる野市の秋川河川敷でハンマーで砕いて投棄した」

 殺害された土田は〈カリスマ・ホスト・土田十寛(みつひろ)〉の源氏名で知られテレビなどにも出ていた。行方が分からなくなった当時、土田への反感を捜査員に公然と言い放つホストも多くあった。土田は吠え立てていたという。

「西東京、八王子、立川、多摩でホストクラブ開くなら、カネ持って挨拶に来い」

 反感は、土田が無残に死ぬことを期待する声にもなっていた。東京地裁立川支部305号法廷。2013年11月27日。

 被告人・射殺した実行犯・阿部卓也の元妻、阿部篤子が証言台に立った。腰縄姿である。グレイのスエット上下。面長で目が細い。勾留中のためスッピン。肌白、撫で肩。福島の高校卒業後、職を転々。事件後、卓也と結婚、すぐに離婚。実家で1歳の娘と暮らしていた。

〈検察官の篤子への質問〉

──(あなたの元夫)卓也さんは土田さんからどんなことをされていたんですか。

「殴られて顔腫らして帰ってきたり、こき使われて休みもない。だから、殺しちゃおうかって。あたし『殺すの間違ってる』と止めました。でも、『このままだと俺の人生めちゃめちゃだ』って。押し問答したら『分かってくれないんだったらいいよ』と包丁を持ち出して『殺しに行くから』って出て行きました。

 あたし、すぐあと追って卓也の服を引っ張って『だったらあたしを殺してから行って』って。『一人殺すのも二人殺すのも変わりないでしょ』」

〈検察官、冒頭陳述〉

 土田を射殺した卓也は、友人・青野俊太朗を巻き込む。

「卓也は青野と合流して、用意した鍋を実家へ運搬した。収納ボックスを一緒に2階へ運びあげ、ずんどう鍋に遺体、水、アルカリ性の薬剤を流し込み、コンロで煮た。ずんどう鍋とは、ラーメン屋などが大量のダシをとるための煮込み鍋である。青野は鍋の中身をお玉でかきまぜて、帰宅した。

 卓也は溶解の状況を(共同経営者・主犯の)玄地栄一郎に報告したが、夜になっても全部溶かすことができず、また思ったより溶解に長時間かかり、玄地に薬剤の追加を依頼した。実家の親・秀樹が帰宅し、鍋を発見。息子・卓也から『死体を溶解している』と告げられた。秀樹は息子のため、事件に加担することを決め、『1週間休む』と職場に連絡した」

 卓也は追加の薬剤で肉と骨を煮つづけた。翌未明、卓也、篤子は殺害に使用した拳銃を捨てに多摩湖に行く。

関連記事

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン