国内

安倍政権のメディア支配はなぜ成功したのか 上杉隆氏が解説

 第一次安倍政権はメディアにやられたと、政権スタッフは口を揃える。そして第二次政権発足から1年、安倍政権は圧倒的なメディア支配に成功した。その裏に何があったのか。政治とメディアの癒着関係を暴いてきたジャーナリストの上杉隆氏が解き明かす。

 * * *
「日本の政治報道は終わったよ」。この12月、私は知己の大手紙の元政治部長など古参の政治記者3人と席をともにしていました。その夜はもっぱら、安倍官邸のマスコミ対策と政治報道の劣化を嘆く声ばかりでした。

 確かにこの1年の安倍政権の国会運営は見事でした。衆参合わせて100時間にも満たない審議時間で成立させた特定秘密保護法のウラで、一気に「カジノ(IR)法案」の提出を推し進め(継続審議)、武器輸出三原則の見直し(自公合意)など、これまでいかなる政権でも成し得なかった政治課題を次々と前進させたのです。 

「真に大事なことは、少し大事なことの裏で為してしまえ……」。政治家秘書時代に覚えたメディア戦略の定石が頭をよぎるほど、安倍政権のメディア戦略の巧妙さが浮き彫りになった今国会でした。

 同席したベテラン記者らは、強引な政権運営を批判しながらも、なす術のない後輩記者のだらしなさを嘆いてばかりでした。

 現役の政治記者たちは私と同年代、反論を探したものの、「所詮政治は結果責任」というこれまた古い永田町用語に突き当たり、私は沈黙するばかりでした。

 とはいえ私は、彼らに対して言いたいことをぐっと我慢してもいました。その原因こそが、私が15年間もの間、猛烈な反発の中で改革にトライしてきた記者クラブシステムにあると知っているからです。

 実は、今回、第二次安倍政権が自らの狙い通りに事を進めることのできた要因は、自己の利権に汲々とするあまり、権力監視の同志であるはずの同業者たち(海外メディア、雑誌、ネット、フリーランス)を排除してきた記者クラブシステムにあると言えるからです。

 つまり、官僚機構と一体となることで、自らが政府の特定情報の保護に加担してしまったことへの「しっぺ返し」に過ぎないのです。

 安倍政権は、6年前の第一次政権の敗因を「メディア戦略の失敗」と結論づけています。今回、政権内部の数名から、拙著『官邸崩壊』を読み直すなどして、前回の失敗を徹底的に検証し、なかば教訓として政権運営に臨んだという声を聞きました。それは、既存メディアの集合体である記者クラブシステムとうまくやるのではなく、徹底的に利用し、牛耳ってやろうという強硬なメディア戦略への方針転換でもありました。

 この方針転換は見事にはまりました。近年の日本政治においてメディア戦略で成功し、長期政権になったのはすべて強硬路線を採用した政権や政治家たちばかりだからです。

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン