ライフ

淡路恵子 黒澤明に「妖婦をやりたい」と言って見初められた

 大女優でありながら、夫・萬屋錦之介の借金などもあり、お金に苦労した淡路恵子さん(80才)。そんな淡路さんに、仕事の向き不向きについて聞いた。

 * * *
 どんな仕事にも、向き不向きがあります。逆に言えば、誰にだって向いてる仕事はあるはずなんです。

「そんなの、ないわよ」って思い込んでる人は、自分が気づいてないだけかもね。

 今や女優が天職だって確信してる私でさえ、最初は映画に出るなんて絶対にイヤだったもの(笑い)。

 私が黒澤明監督の映画『野良犬』(1949年製作)でデビューしたのは、まだ松竹歌劇団の研究生だった16才の頃でした。

 黒澤監督が踊り子の役ができる女の子を探してたの。踊り子っていっても場末の酒場で踊るような娘ね。日劇とか宝塚とか、他にもいろんなところを探し歩いてたんですって。“若くて素人っぽい娘”というのが条件だったみたいね。

 そこで当時研究生だった私たち何人かが、黒澤監督をはじめプロデューサーとか映画会社の役員さんとかの前に呼ばれてオーディションみたいなのが開かれたの。っていっても監督の前で雑談するだけなんだけど…。

 そこでどんな役がやりたいの?って聞かれてみんな、

「私は歌手の役」

「私は宝塚みたいな男役」

「私はウブな娘役」

 とかって、それぞれの夢を語るのよ。

 でも、その時の私の答えは「妖婦をやりたい」だったの(笑い)。そうしたら、えっ? ってみんなして驚かれちゃってさ。でも私は大真面目に言ったつもりだから、こっちのほうこそ、驚くじゃないの。

 そのちょっと前にね、イギリス映画の『妖婦』(1946年製作)ってのを見てたからそんな答えになっただけで、奇をてらおうなんて思いは全然なかったわ。

 映画に登場する妖婦は全身黒マント。馬に乗って現れて黒帽子をサッと取ると、長い金髪がフワァとなるの。かっこいいのよ、これが!

 そんな話をしてたら“おもしろいね”ってことになったみたいで、映画の出演が決まっちゃいました。

 でもね、私は松竹歌劇団の研究生よ。舞台に出るために頑張ってるんだから「映画なんてイヤだ」って、猛抗議したの。でも会社が決めたことなのでダメでした(笑い)。

 当時、私は本名の井田綾子。映画に出るにあたって超尊敬していた宝塚歌劇団の大スター、淡島千景さんの「淡」の一文字をもらって芸名を「淡路」にしたの。恵子の方は黒澤監督がつけてくれたのよ。恵まれた子になるようにって。

 女優・淡路恵子の誕生ね。

※女性セブン2013年12月26日・2014年1月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン
ここ数日、X(旧Twitter)で下着ディズニー」という言葉波紋を呼んでいる
《白シャツも脱いで胸元あらわに》グラビア活動女性の「下着ディズニー」投稿が物議…オリエンタルランドが回答「個別の事象についてお答えしておりません」「公序良俗に反するような服装の場合は入園をお断り」
NEWSポストセブン
志穂美悦子さん
《事実上の別居状態》長渕剛が40歳年下美女と接近も「離婚しない」妻・志穂美悦子の“揺るぎない覚悟と肉体”「パンパンな上腕二頭筋に鋼のような腹筋」「強靭な肉体に健全な精神」 
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《還暦で正社員として転職》ビッグダディがビル清掃バイトを8月末で退職、林下家5人目のコンビニ店員に転身「9月から次男と期間限定同居」のさすらい人生
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された佳子さま(2025年8月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《日帰り弾丸旅行を満喫》佳子さま、大阪・関西万博を初訪問 輪島塗の地球儀をご覧になった際には被災した職人に気遣われる場面も 
女性セブン
鷲谷は田中のメジャーでの活躍を目の当たりにして、自身もメジャー挑戦を決意した
【日米通算200勝に王手】巨人・田中将大より“一足先にメジャー挑戦”した駒大苫小牧の同級生が贈るエール「やっぱり将大はすごいです。孤高の存在です」
NEWSポストセブン
侵入したクマ
《都内を襲うクマ被害》「筋肉が凄い、犬と全然違う」駐車場で目撃した“疾走する熊の恐怖”、行政は「檻を2基設置、駆除などを視野に対応」
NEWSポストセブン
山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン