大メディアはこうした動きを報じないどころか、むしろシロアリ官僚の巻き返しの片棒を担ぐ報道をしている。財務省が見直しを正式発表した昨年12月12日の前日、朝日新聞は朝刊で、<国家公務員宿舎  家賃を2倍弱へ>という見出しで、他紙に先駆けて値上げを“スクープ”した。

<「公務員優遇」の批判が強いことから、大幅な値上げに踏み切る>とした記事では、間取りも広さも示さずに、<全国の幹部用宿舎の平均家賃は現在6万6千円。都心部などにある宿舎については10万~13万円程度に値上げする方向>と報じた。

 これだけ見ると大幅値上げのように読めるが、幹部用官舎は通常、都心一等地にある3LDK~4LDKで80平方メートル以上の物件である。

 たとえば高級住宅街として知られ・渋谷に近い目黒区大橋にあり、事務次官クラスが入居することもある「公務員宿舎大橋住宅(249戸)」は、4LDK(約90平方メートル)で現在の家賃が月額約7万8000円。

「付近の物件ならば4LDKで家賃は30万~40万円程度」(地元不動産業者)という立地だ。そこに値上げ後も月額約13万円で住めるのは特権以外の何ものでもないが、朝日新聞の尺度ではそうは評価されないようだ。

 奇しくも朝日新聞が見出しに掲げた<2倍弱>という数字は値上げ幅圧縮前の数字であり、情報をリークした財務省の「巻き返し」を目立たせないようにする意図が透けて見える。

●文/佐々木奎一(ジャーナリスト)と本誌取材班

※SAPIO2014年2月号

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