ライフ

抗がん剤副作用で髪が抜けた娘に母 頭を丸めて「おそろいよ」

「涙にはストレス解消の効果がある」と、メンタルヘルスケアの専門家は指摘する。ここでは42才主婦が語った母親にまつわる涙エピソードを紹介しよう。

 * * *
 2年ほど前から、便に血が混じるようになりました。その時は「切れたのかな?」と思うくらいでしたが、それが月に1度、2度、そして週に1度は出血するようになったのです。

 さらに、左下腹部を触るとシコリもあり、痛みはないから大丈夫だろうけど、一応病院に行こうかと思っていた矢先、急にお腹が痛くなり、倒れてしまいました。救急車で病院へ運ばれ、検査を受けてみると腸閉塞でした。そして同時に、大腸がんが見つかったのです。

 主治医に「がんが5cm以上になっている」と言われた時は、目の前が真っ暗になりました。しかしすぐに手術を行い、幸いにも成功。抗がん剤治療を1クール終えて、無事退院しました。わが家で家族の顔を見られた時は、心の底からホッとしました。

 ところが、それから3週間ほどたつと、髪がものすごい勢いで抜けていきました。朝起きると枕元に大量の毛が落ちていて、お風呂では、洗髪のたびに、両手にあふれるほどの髪が抜けていくのです。排水口にこんもりと溜まる自分の髪を見て、気の遠くなるような衝撃を受けました。さらに、眉やまつげも抜けて、頬もこけ始め、鏡を見るのが苦痛になりました。

 家事をするために通いで手伝いに来てくれていた母に相談すると、「なによ、髪くらいすぐ生えるわよ。私だって髪が薄くなってきたし」なんて、のんきな反応。

 きっと励ますつもりであえて明るく言ってくれたのでしょうが、私はカチンときて、「どうして同じ女なのにわかってくれないのよ!」と怒鳴ってしまいました。これからも続く抗がん剤治療の苦痛や再発の恐怖などがあり、心に余裕がなかったのです。ほんのひと月前までは、普通に生活していたのに…。

 その翌日です。朝、いつもの時間にやってきた母は珍しく帽子をかぶっていました。帽子を取ると、なんと頭を丸めていたのです。「おそろいよ。これから一緒に、ウイッグでいろんな髪形を楽しみましょうね」。私は母の手を取って、思わず泣き崩れてしまいました。

 今も、抗がん剤治療は続いています。副作用はつらいですが、母が、そして家族が支えてくれるので乗り越えられそうです。

※女性セブン2014年2月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン