国内

天皇陛下のお言葉 どれもご本人が時間をかけて用意している

 国民のために祈り続ける天皇陛下。それを支える皇族方。そのお言葉には深い意味が込められている。近年、そのお言葉について神道学者・高森明勅氏が読み解く。

 * * *
 皇室の方々の「お言葉」について誤解している人が多いようだ。宮内庁の役人あたりが当たり障りのない美辞麗句を並べた儀礼的、形式的な作文をこしらえて、ただそれを読み上げているだけではないのか。記者会見でのやりとりも、あらかじめ用意された無難なシナリオをなぞっているにすぎないだろう、と。

 そんな誤解があるから、取り立てて注意を払おうとせず、一々丁寧に理解しようともしないで見過ごしているように思える。だが、実際は違う。

 どのお言葉もご本人がじっくり時間をかけて用意されている。記者会見での当意即妙のお答えに舌を巻くこともある。それらの内容は驚くほど深く、鋭い場合がしばしばで、時にはかなり率直であり、“過激”ですらある。

 もちろん天皇陛下は憲法上、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」という極めて制約の多いお立場だ。皇族の方々も「象徴」たる天皇のご近親として、自由気ままなご発言は決して許されない。しかし、むしろそれ故にこそ、細心に選ばれ慎重に練り上げたお言葉に渾身の思いを託しておられる。

 お言葉は皇室と国民を直接つなぐ、数少ない貴重な“懸け橋”である。改めて注目する必要があろう。たとえば昨年の天皇陛下のお誕生日に際しての記者会見(平成25年12月18日)でのご発言。

「天皇という立場にあることは、孤独とも思えるものですが、私は結婚により、私が大切にしたいと思うものを共に大切に思ってくれる伴侶を得ました。皇后が常に私の立場を尊重しつつ寄り添ってくれたことに安らぎを覚え、これまで天皇の役割を果たそうと努力できたことを幸せだったと思っています」

 天皇の「孤独」がストレートに語られていることに、まず目を向けるべきだ。国民統合の象徴であり、三権の上に立つ国家秩序の頂点であり、わが国における究極の「公」の体現者である天皇。並ぶ者なき、まさにたったお一人の立場だ。その孤独は想像を絶する。

 ご結婚によって伴侶を得られても、「私の立場を尊重しつつ」とあるように、ご夫婦としての側面より、皇后には「象徴」たる天皇をお側近くで支える役割が優先される。ただ「寄り添って」ではない。

 しかも「安らぎを覚え」たことではなく、それによって「天皇の役割を果たそうと努力できたこと」が「幸せだった」とおっしゃっている。どこまで無私な方なのか。さらに、“果たせた”ではなく「果たそうと努力できた」という極めて謙虚なご姿勢である。何気ないようで実に深いお言葉だ。

※SAPIO2014年3月号

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン