国際情報

保険に加入できず医療費全額自己負担で治療断念の中国人続出

 現在、中国には3種類の公的医療保険があり、それぞれ「都市部の従業者向け(保険料率は賃金の8~10数%。うち本人負担は2%)」「都市部の非従業者向け(保険料は年数百元程度)」「農村戸籍者向け(同じく年数十元程度)」と、制度上はすべての国民をカバーできることになっている。

 しかし、それは建前にすぎない。現実には保険に加入できず、「全額自己負担」となって医療費が払えないために治療を諦める低所得者が続出している。

  河南省に住む男性・張さんは一昨年、4歳の息子が急性白血病と診断された。医師から「3日以内に2万元(約34万円)が必要」と言われた上に、完治するまでの3年間で10数万元の医療費がかかることがわかった。加入地域や保険の種類で自己負担率は異なり、農村戸籍者の場合で30~70%。

 その中で急性白血病は自己負担率が10%で済む「大病」に指定されているが、張さんは息子の戸籍届を出していなかったために保険に加入できず全額自己負担に。借金で集めた8万元を使い果たした後、治療の継続を断念した。長く続いた一人っ子政策により第二子以降で「無戸籍」となっている者が数千万人とも1億人以上とも言われるから、同じ悲劇があちこちで起きている可能性は高い。
 
  中国では救急時さえ「看病難」に直面する。この冬、河北省の農村に住む周さんは自宅で倒れた母親のために救急車を呼んだ。医師と看護師が乗って来て点滴や注射をしながら100km近く離れた病院まで運ばれ事なきを得たが、後日、病院からは1200元(約2万円)が請求され、そのうちの1000元は「救急車代」だったという。

 「有料救急車」の相場は地域で異なり、1月20日に基準を改定した天津市の場合、治療費として220元、距離別料金として3kmまでが50元、それ以上は1kmあたり10元。2人以上の患者の「相乗り」なら60%に割引されるという。

  上海在住のフリーライター西谷格氏によると「そのように高額な救急車に貧乏人はとても乗れない。それよりは割安な『黒救急車』と呼ばれる民間救急車が需要に応えている。それらを呼んでも現金やカードを見せなければ乗せてもらえないのが現実」という。
 
※SAPIO2014年3月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
沢口靖子
《新たな刑事モノ挑戦も「合ってない」の声も》沢口靖子、主演するフジ月9『絶対零度』が苦戦している理由と新たな”持ち味”への期待 俳優として『科捜研の女』“その後”はどうなる?  
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
家族が失踪した時、残された側の思いとは(イメージ)
「お父さんが死んじゃった」家族が失踪…その時“残された側”にできることとは「捜索願を出しても、警察はなにもしてくれない」《年間の行方不明者は約9万人》
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン