現在では戒名の半数以上が院号のついた戒名とされ、50万円以上のお布施を寺院側に渡すことも珍しくはない。

 仏教とは、民に「平等」を説くことを旨としている教えのはずなのに、こうした戒名制度は明らかに矛盾しています。現実社会との乖離は、「葬式」のあり方を見直す気運の高まりと無関係ではないでしょう。葬式や告別式を行なわない直葬、海や川に遺骨を撒く自然葬といった葬り方が広がっているのは時代の“必然”です。

 そして私は、簡略化された葬儀のさらに先をいく「0(ゼロ)葬」を提唱したい。

 遺骨の処理は火葬場に任せ、それを引き取らないという選択です。多くの火葬場では遺族が遺骨を引き取ることが前提となっていますが、申し出があれば遺骨を引き取らなくても構わない火葬場が一部にあります。

 残された遺骨は契約業者が引き取り、骨粉にされた上で、寺院や墓地に埋められ、供養される。そして、火葬だけで済めば業者に頼んでも10万円でおさまるから、遺族に負担がかからない。墓を「造る」「守る」といった心理的、そして金銭的重圧に現代人は悩まされていますが、そこから自由になれます。

「0葬は人の葬り方ではなく遺体処理だ」といった反論もあるでしょう。でも、80歳、90歳を過ぎ、人生を謳歌したのなら、「遺体処理」でもいいのではないか。来世こそ極楽へ──といった憂いを抱く方も少ないと思います。

 墓がなければ墓参りに行けないと思われるかもしれません。しかし、墓参りは都市部への人口流入に伴って郊外に墓が建てられるようになってからの新しい習慣に過ぎない。

 故人のために親戚が集まりたいなら故人を偲ぶ食事会を開けばいいし、そこで遺族たちが思い思いに故人の「思い出」を語るなら、形だけの墓参りよりも、実りあるのではないでしょうか。

※週刊ポスト2014年3月21日号

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