女性役員の登用ラッシュが始まった。新年度人事で、野村信託銀行の新社長に真保智絵氏(48)が就任。みずほ銀行では有馬充美氏(51)、三井住友銀行でも工藤禎子氏(49)が、それぞれ女性初の執行役員に就任した。
経済界のブームともいえる女性登用の背景にあるのは、今年1月に安倍首相が施政方針演説で掲げた「20・30」目標である。2020年までに「指導者的地位に女性が占める割合が30%以上になるよう期待する」としたうえで、上場企業は少なくとも1人は女性役員を置くべきだとした。
このタイミングで女性幹部登用を政府が打ち出したのは日本の雇用制度の歴史と深い関係がある。
1986年に施行された男女雇用機会均等法から今年で28年。当時22歳で総合職として入社した女性社員も50歳を超え、“役員適齢期”を迎える。すでに管理職になっている女性も少なくなく、彼女たちは紛れもない「役員予備軍」だ。
男女平等という旗を背負ってきた彼女たちにとって、男性社員と伍しながらキャリアを築くことは仕事を続けるモチベーションの一つだったに違いない。一方、女性社員のロールモデルであり続けることが重圧になってきた面も否めない。大手就職サービス会社の社員・S氏(31)は、女性上司である50歳の部長についてこう語る。
「彼女はキャリアのために結婚も出産もしなかった典型的な“バリキャリ人間”。たしかに仕事はできるんです。でも、女性というハンディを乗り越え、ここまでの地位に登り詰めるには多くの苦労があったんでしょう。たとえば部内のマネジメントにおいても、敵味方の色分けをすぐにつけてしまう傾向がありますね」
気に入らない部下には、ちょっとしたミスでも「こんなこともできないの?」「あなたには何も任せられないわね」と、自分のデスク前に立たせたままで延々と罵り続ける。一方で、自分に媚びを売ってくるような社員には男女問わず、懇切丁寧に指導するという。
また彼女たちは、バブルを謳歌してきたアラフィフ世代。この女性部長は、容姿には細心の注意を払い、毎朝、髪を巻いて出社してくるという。