──若い人材を育てることがますます難しくなっているとも言われるが。
安藤:うちの事務所の若い人たちだって、入った時点では多くが”使えない若者”です。だから私は厳しい態度で接します。
いくつかのことを半ば強制しています。ひとつは読書。毎週月・水・金の3日間、1時間ずつ本を読む時間を設けています。私が「これを読みなさい」と本を指定して、仕事中に読ませています。日々学ばなければ世界に置いて行かれるからです。
世界が戦場ですから英語も必要です。6~7年前からネイティブの講師を招いて週1回2時間ほど勉強会をしています。最初は英語なんてできなかった人でも、続ければずいぶん変わるものです。最近では英語でのプレゼンテーションもできるようになってきました。
──安藤さん自身は、どうやって学び取ってきたのか。
安藤:人生、戦い続けながら同時に学び続けています。高校時代はボクサーを目指していました。プロのライセンスを取得し、6回戦まで行った。そんなある日、うちのジムにファイティング原田さんが練習に来ました。19歳で世界フライ級王座についたヒーローです。向こうが2つ年下でしたが、その練習を目の当たりにし、才能の違いを痛感してボクシングの夢は断念しました。
では自分には何ができるのかと問うて、建築と出会った。建築という目標を持ったからこそ今の自分がある。ちなみにこのSAPIOの取材の前に原田さんのジムを訪ねてきましたが、「今のままでも4回戦行けるよ」と言われました(笑)。
でも建築を志してからが大変でした。学歴もない。経験もない。昼間は働き、夜は通信講座と読書で建築を学びました。そして22歳の時に日本中の建築を見て回り、24歳で今度はヨーロッパ、アフリカ、アジアの建築を見て回りました。この時の経験が大きな糧になっています。ボクシングも建築も根は同じです。大事なのは「体力」。肉体的な力だけではありません。「知的体力」も必須です。このふたつの体力を磨き続ける。それが私にとっての「学び」であり、エネルギーの源です。
※SAPIO2014年5月号