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ネットで人命救助のグループ「日本人も捨てたものではない」

 大阪・枚方市を中心に活動する河内音頭のダンスチーム『スターダスト河内』のメンバーが、動画共有サイト「ニコニコ動画」内の『ニコニコ生放送』(ニコ生)で知り合った、埼玉に住む一人暮らしの男性(69歳・ハンドルネームは「頑固一徹」)の話す様子がおかしいことに気付き、救急隊員に通報。孤独死の危機を回避した。

 両者はこれまで一度も会ったことがなかったため、ダンスチームのメンバーは一徹さんの情報を仕入れるため、ニコ生の緊急生放送やスカイプ(インターネット電話サービス。音声だけでなく、メッセージ機能もある)を通じて病院に行くよう呼び掛けを続けた。

 そして、ついに一徹さんの保険証を画面に映させることに成功。救急隊員が駆けつけて無事に一徹さんを病院に搬送することができた。

 一徹さんは初期の脳梗塞の診断。1週間の入院後、無事退院し、大事には至らなかったが、もし放置していたら、孤独死の可能性があった。一徹さんが語る。

「年金生活で一人暮らし。誰と会話する機会もなく、1日1回話をするため、始めたニコ生でした。今回のことは本当に感謝しています。人の繋がりは大切にしないといけないと思った。助けられた命、これからも全力で余生を生きたい」

『スターダスト河内』のマネージャー・十河真実さん(54)が語る。

「毎日ニコ生を見ていると親しくなる。親近感もすごく湧いてくる。でも、ネットでは住所も本名もわからない奇妙さがある。目の前であんなに苦しんでいても、画面の向こうの人には何もできなかった。

 でも、日本人は凄いなと思いました。お互いを知らない皆が、束になって1人の人間を助けようとした。この事実がある限り、日本人も捨てたものではありません」

 子供たちにも大きな勇気を与えた。

「今回は若者がいないとできなかったし、おばちゃんの強引さがなくてもできなかった。チームだからこそできたと思う」(久富さん)

 奇跡の救出劇の10日後、メンバーは滋賀・大津にある三井寺の奉納・江州音頭の会場で踊っていた。その会場でメンバーたちは、難病「遠位型ミオパチー」の国の難病認定を求める署名活動をしていた。

「メンバーの家族が難病で苦しんでいるんです。国の難病指定にされれば新薬の開発も進む。いろんな人に知ってもらいたくて、踊りの会場で署名の協力を求めています」(久富さん)

 河内音頭で地域との結びつきが強くなったメンバーの多くは、地域のコミュニティで役員をしながら、防災推進委員として地域の問題にも取り組んでいる。自分たちの手で青年会も立ち上げた。

「親たちが安心して住める地域でないと、子供たちも世界に羽ばたけない。これも河内音頭から見えた世界です」(メンバーの久富雅美さん・29歳)

 ネット社会奇跡の物語は、こんな若者たちがいたからこそ起きた。スターダスト河内のメンバーはこの春上京し、一徹さんと“初めて”会う予定だ。

※週刊ポスト2014年5月2日号

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