兼職も目立つ。北畑隆生・元経産事務次官は学校法人三田学園理事長という“本業”とは別に、神戸製鋼所と丸紅の社外取締役として2社から推定約2300万円の報酬を受けている。国税庁次長、国土交通審議官などを歴任した舩橋晴雄氏のように5社の社外取締役や社外監査役を掛け持ちする“売れっ子”もいる(報酬合計・推定約3343万円)。
社外取締役の仕事は年間10数回ほど開かれる取締役会に出席して経営に意見を述べることだ。非常勤で複数の企業を兼務して高額報酬をもらえるのだから庶民感覚からは考えられない恵まれた仕事だ。
福田政権当時、国家公務員制度改革推進本部事務局審議官として霞が関の激しい反発を受けながら天下り規制など公務員改革に取り組んだ元経産官僚の古賀茂明氏が語る。
「社外取締役制度の義務化は企業のコンプライアンス向上のためにも必要な政策だが、天下り先の拡大に利用するのは本末転倒も甚だしい。安倍首相は第1次内閣当時には公務員改革に力を入れた。しかし、今回は消極的で、官僚の利権に切り込もうとしない。官僚はそれがわかっているから、安倍政権に協力する。政官が一体となって天下りのための社外取締役制度推進をはかっているわけです」
※週刊ポスト2014年5月9・16日号