セ・リーグ首位に立ち、23年ぶりの優勝も現実味を帯びてきたとまで語られる広島カープ。何より広島ファンが怖れているのは、自分たちがこれまで自虐的に語っていた、「カープは鯉のぼりの季節まで」というジンクスだ。開幕後に好調でも、なぜか5月以降急ブレーキがかかって低迷することが多く、「カープ(=鯉)」だけに「鯉のぼり」をしまい込むと終了、という意味である。
切れ味鋭いスライダーを武器に138勝106S、先発と守護神でフル回転した広島OBの佐々岡真司氏が語る。
「“鯉のぼりまで”といわれているのは選手も知っています。現役時代、確かにその頃に低迷することが多く、ベンチの空気が悪くなっていったものです」
ただ佐々岡氏は、「今年に限ってそれは心配ないのでは」と付け加える。
「鯉のぼり云々といわれ始めたのは、ある程度強かった時代の話で、最近は鯉のぼりどころかそもそも開幕から低迷することが多かったですから(苦笑)。その意味で今年、またこうしたことが広くいわれ始めたのは、裏を返せば戦えるチームになったということ。僕は今年のチームなら、5月の失速もないと思いますよ」
やっぱりちょっと自虐が混じるのが気に掛かるが、ともかく今年は本当に“イケる”かもしれない。そう信じたい。
優勝へのカギは何か。本誌はそれを語るに相応しい、優勝を知るレジェンドに話を聞いた。監督として1975年の球団初Vを含め、広島を4度の優勝と3回の日本一に導いた古葉竹識氏だ。
「とにかく同一カードの初戦を取って、勝ち越しを重ねていくことが大切。3連敗を避け、主力がキッチリと活躍しなくてはなりません。
そこでカギになるのはオールスターなんです。(初優勝した)1975年も、5月に単独首位に立ったものの、その後は一進一退だった。しかし7月のオールスターで山本(浩二)、衣笠(祥雄)が甲子園で2打席連続本塁打を放ち、外木場義郎が好投して“赤ヘル軍団”が注目されるようになった。そして8月に、山本が月間MVPの活躍を見せ、ここで優勝が見えたんです。なんといっても中心選手の活躍が、チームの力を1つにまとめますからね」
この好調を5月以降も維持し、オールスターで主力が活躍すること。そうすれば、カープの優勝は間違いなし──。鯉のぼりは6月以降も飾り続けるとしよう。
※週刊ポスト2014年5月9・16日号