スポーツ

代表選出・大久保嘉人 父の遺言で貫いた「あきらめない心」

《日本代表になれ 空の上から見とうぞ》。ちょうど1年前の5月12日、天国へ旅立った父。病室を整理していると、サッカー日本代表・大久保嘉人選手(31才・川崎フロンターレ所属)は、父が最後の力を振り絞り書き残した、こんなメッセージを見つけた。診断書の裏に綴られた弱々しいか細い文字だった。この“遺言”こそが、彼の運命を大きく変えることとなった──。

 父の一周忌に行われたサッカーW杯ブラジル大会の日本代表メンバー発表。ザッケローニ監督(61才)の口から、16番目に読み上げられたのが大久保の名前。報道陣からも「ウォー!」という歓声があがるサプライズ選出だった。

 2010年南アフリカW杯で、エース・本田圭佑(27才)らとともに、レギュラーとして日本代表のベスト16進出へ貢献した大久保。しかし、大会後は脱力感が大きく、周囲には“代表引退”をほのめかしていた。

 そんな大久保を一喝したのが父・克博さん(享年61)だった。克博さんは2005年ごろから肝臓がんなどのため、福岡市内で長きにわたる入院生活を送っていた。弱音を吐く息子に、病床から電話口で、「お前は、バカか!」などと一喝、大久保を励まし続けた。だが、当時の大久保は精神的にも肉体的にも疲れ切っており、モチベーションは上がっていかなかった。

 ザックジャパン発足以後、大久保が代表に招集されたのは2012年2月のアイスランド戦のみ。このときも結果を残せず、以来、一度も代表に呼ばれていない。

 だが、冒頭の父の“遺言”を見てからは、再び“日の丸”への思いを強くする。天国の父へ、もう一度、自分が世界の舞台で活躍する姿を見せるためだった。

 そこから人が変わったかのように、Jリーグで得点を量産していく。そして昨シーズンは得点王に輝く大活躍。

 それでも代表から声がかかることはなかったが、父との約束を果たすため、あきらめることなく、W杯イヤーとなった今シーズンも得点を重ね続け、大久保は大逆転でW杯メンバー入りを勝ち取ったのだった。

「自分が入ってワクワクさせるようなプレーを」

 こう意気込みを語った大久保。克博さんは天国で大好きなお酒でお祝いしていることだろう。

※女性セブン2014年5月29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン