また、ウェスチングハウスが開発した最新型のPWR(加圧水型原子炉)AP1000は、あらゆる電源が喪失しても圧縮ガスによる圧力や重力などの力で自動的に原子炉容器内に冷却水が注入され、自然循環によって熱を取り除いていき、72時間後に115度まで冷却できる設計になっている。つまり、もし福島第一原発のような全電源喪失状態になったとしても、設計上は極めて安全なのだ。
世界各国で脱原発・反原発の動きが活発化していると言われるが、全原発を止めたのは日本だけである。たとえば、アメリカはスリーマイル島原発事故後も既存の原発は動かし続け、チェルノブイリ原発事故後のロシアも他の原発は稼働させている。
福島第一原発事故後のヨーロッパを見ても、原発大国のフランスは当然そのまま動かしているし、ドイツは2022年までに、ベルギーは2025年までに、スイスは2034年までにすべての原発停止を決めたものの、いずれも日本のように全原発を止めてはいない。
しかも、いま世界ではアメリカ、イギリス、中国、インドなどで合わせて100基くらいの原子炉の新設が計画されている。前述のAP1000などは中国でも採用されており、福島の教訓をいち早く取り入れている。そうした中で今後原発をどうするのか、日本は感情論ではなく、もっと冷静に議論すべきだと思う。
※週刊ポスト2014年5月23日号